2010-05-17 [長年日記]
_ [Jazz] Very Live At Buddy's Place / Buddy Rich
バディ・リッチと言えばビッグバンドだが、小編成のコンボでの作品もいくつか残している。これもその一つ。70年代に経営していたクラブ「バディーズ・プレイス」での74年録音のライヴだが、ハービー・ハンコックのごりごりファンクChameleonの直後にカウント・ベイシーのスイング・ジャズ定番Jumpin' At The Woodsideが来て、他にもホレス・シルバーの名曲Nica's Dreamをやってみたりと誠に節操のないレパートリーを、マイルスのバンドに参加する直前のソニー・フォーチュンがアルト、ウディ・ハーマン楽団にいたサル・ネスティコがテナー、ケニー・バロンがピアノ(一曲だけ別の人)、アンソニー・ジャクソンがベース、そしてジャック・ウィルキンスがギターという、それなりに豪華なんだがあまり一貫性が感じられないメンツで演奏している。ちなみに黄色いタートルネックに真っ白なスーツというバンドの怪しいユニフォーム(おそらく特注)はピエール・カルダンのデザインらしい。内容としては、とりあえずリッチのドラミングはいつもながら快調なので、それだけでも十分楽しめます。
_ [Jazz] I Remember You / Hank Jones
ハンク・ジョーンズが亡くなったそうだ(朝日新聞の記事)。2月にも来日してライヴを行うくらい元気だったので急死と言えば急死だが、享年91歳というからこれはもう大往生の部類だろう。これでデトロイトが生んだジョーンズ三兄弟は、次弟サド(1986年没)、末弟エルヴィン(2004年没)、長兄ハンクの順で全員天に召されたことになる。
個人的には90年代以降何度か生で見る機会があったが、なまじ全盛期(といってもこの人の場合、1930年代(!)からコンスタントに活躍してきたので、いつが「全盛」期なのかよく分からないのだが)の細かいところまで神経が行き届いた素晴らしさを知っているだけに、晩年の自動ピアノのような演奏はやや寂しさの残るものだった。いかにもハンクらしい良さが存分に味わえたのは、厳密に言えば1970年代までだったのではないかという気もする。
その70年代、ハンクはトニー・ウィリアムスに引っ張り出された「グレイト・ジャズ・トリオ」での活動と並行していくつかのレーベルにリーダー作を録音しているが、どれも素晴らしい出来だ。特にフランスのBlack & Blueに吹き込んだ3枚のピアノ・トリオものは、ジョージ・ドゥヴィヴィエ(ベース)に加えてオリヴァー・ジャクソンあるいはアラン・ドウソン(ドラムス)という名手をサイドに従えたもので、まあ地味と言えば地味だが、一音一音に精気がみなぎっていてよく聞く。これはそのうちの一枚。ハンクが驚異的に「長持ち」したのはハーモニック・センスが異常に若々しかったからだと思うが、このアルバムでも2曲目あたりの幻想的なテーマ処理でそれが窺える。そして3曲目のような古い曲を、本来のテイストを保ちつつ、それでもカビ臭くなることなくサラッとソロ・ピアノで弾けたのは、おそらく当時でもハンクだけだっただろう(でも、そういえばスタンリー・カウエルもやってたな…)。
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