2012-01-21 [長年日記]
_ [Jazz] The Early Show, The Late Show / Etta James and Eddie "Cleanhead" Vinson
エッタ・ジェイムズも死んでしまった(朝日新聞の記事)。ドラッグやら病的な肥満やらに悩まされ続けた人生からすれば、73歳まで生きたというのは上出来の部類なのかもしれない。ちなみにこの人も、ジョニー・オーティスの引き立てでレコード会社と契約したのだった。日本ではそんなに知名度はないと思うが、グラミーやらロックの殿堂入りやら、主立ったアメリカの音楽関係の賞は総なめにしている偉大な歌手である。全盛期のチェス・レーベルが題材の2008年の映画、キャデラック・レコードでは、彼女の役をビヨンセが演じていますね。
この人は黒人女性歌手の中でもこってりした味わいが濃厚で、まあはっきり言ってド演歌の世界なので苦手な人もいるだろうが、私は大好きだ。個人的に良く聞くのは1986年3月30日から31日にかけてロサンジェルスのクラブでライヴ録音されたこの2枚で、一枚目にはBlues In The Nightというタイトルが付いているのだが、二枚目はただThe Late Showと書いてあるだけ。残りテープのお蔵だしという扱いなのかもしれない。
ジェイムズは強烈な個性のある人なので、周りもそれなりに華のある人でないとバランスが取れないのだが、ここでは相方がエディ・クリーンヘッド・ヴィンスンで、バック・バンドもレッド・ハロウェイのサックス、ジャック・マクダフのオルガン、シュギー・オーティスのギター、リチャード・リードのベース、ポール・ハンフリーのドラムスとまさにこの手の音楽のオールスターと言って良い陣容なので、ジェイムズに全く位負けしていない。そういえば、別に意図したわけではないんだが最近この日記で名前が出てきた人が多いですね。
2枚とも甲乙付けがたい出来ではあるのだが、まあライヴ・セッションの通例で大体こういうのは後ろのほうが盛り上がってくるわけで、個人的にはレイト・ショウのほうをよく聞いている。大物ヴィンスンが最初に4曲前座で(!)歌うのだが、オハコのCleanhead Bluesなどを余裕綽々で楽しげに演じている。アルトサックスも吹くが、2曲目などではホロウェイとの掛け合いもありなかなかだ。で、満を持してジェイムズが出てくるのだが、これまた圧倒的な存在感で観客をあっという間に自家薬籠中のものとしてしまい、ヴィンスンと一緒に当たり曲を堂々と歌い上げている。サイドメンにも皆見せ所があるのだが、中でもシュギー・オーティスのギターが大活躍で、こういうセッティングではギターかくあるべしという演奏に終始していて実に素晴らしい。生で見たかったなあ。