2008-07-08 [長年日記]
_ [Music] The Birthday Concert / Art Blakey & The Jazz Messengers
ジャズを聞くよろこび、ジャズならではの高揚感みたいなものを誰でも手軽に味わえるスタイルはやはりハードバップだと思うのだが、ハードバップと言えばアート・ブレイキー率いるジャズ・メッセンジャーズを外すわけにはいかない。ブレイキーは1919年10月11日の生まれ、このCDは1980年10月11日、フロリダ「バッバズ・ジャズ・レストラン」での録音、ということで、タイトル通りこれはブレイキーの61歳の誕生日パーティにおける演奏である。
この時期のメッセンジャーズは、還暦過ぎたヤク中のおじいさんが、ドラマーというジャズバンドで最も体力を要するポジションを担わなければならないという点でかなり構造的な無理を背負い込んでいるのだが、そこは若手で固められた他のメンバ、特にデビューしたてのウィントン・マルサリスの見事にコントロールされた華麗なトランペットが見事にカバーしている。ブレイキー自身の衰えは決して看過できる程度のものではなく、はっきり言ってかなりヨレているのだが、それが気にならないくらいに他の連中のプレイが良いのである。スタンダードや「モーニン」のような定番に加え、ウォルター・デイヴィス・ジュニアやボビー・ワトソン(ここではアルトも吹いている)らが提供した当時の最新レパートリーがこれまた名曲ぞろいだ。さらにダメ押しで、どの曲にも(たぶんワトソンの手による)適切なアレンジが施されているのだからたまらない。ちなみに、ウィントンの親父のエリスも一曲飛び入りでピアノを弾いている。
この音源は、出自を問えばはっきり言ってブートすれすれみたいなものだと思うのだが、内容が良いせいか今まで実に様々な形で(半)公式に世に出ている。駅で売っているような安売CD(なぜかウィントン名義)にすらなっているが、私が知る限り、ブレイキーのアナウンスなども含めてこの日の演奏が最もコンプリートに収録されているのはこの2枚組CDだ。他のリリースだとJodyが途中でちょん切れていたりするのだが(たぶん録音テープが途中で切れたのだろう)、このリリースではうまい具合に編集して後テーマにつなげている。曲目リストもほぼ正確である。
今までいろいろな人に勧めてきたが(つい最近も80年代の名盤を選ぶという企画で強くプッシュした)、これは鉄板にウケが良い。ブレイキー晩年の傑作であるとともに、おそらくトランペッターとしてのウィントンの最高傑作でもある。あくまで私個人の好みだが、2枚めのほうが良い曲が多いと思う。なので、とりあえずは2枚め、それもTime Will Tellあたりから聞いてみてほしいのである。
_ mhatta [ツッコミのテスト。]