My Human Gets Me Blues

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2010-05-16 [長年日記]

_ [Jazz] Guitars / McCoy Tyner

ギターズ(DVD付)(マッコイ・タイナー/ロン・カーター/ジャック・デジョネット/マッコイ・タイナー・トリオ)

ずいぶん前に誰かに勧められ、へえと思って買ったのだが、忙しくてそのままになっていたのを今ごろになって聞いてみた。

80年代以降のマッコイ・タイナーはそれなりに良い作品もあるのだが(スイートベイジルでのライヴとかテラークに残したラテンものとか)、大方はかつての圧倒的な演奏の影法師という感は否めず、ライヴにしてもこりゃスゲェと恐れ入る演奏がある一方で通して聞くとどうしても一本調子というか必ずダレるところがあり(特にバラード)、今ひとつぱっとしないというのが正直なところだった。おまけに近年は糖尿病なのか単にダイエットしただけなのか知らないがえらく痩せてしまって、年齢も年齢だしパワーが身上の人としてはもう終わったかな、という感じが漂っていたのである。

この新作は、マッコイ、ロン・カーター、ジャック・デジョネットという人生の晩秋トリオにとっかえひっかえ5人のギタリストを合わせてみましたという企画で、ギタリストの人選もまあ普通と言えるのはジョン・スコフィールドくらい、あとはビル・フリゼル、マーク・リボ―というアヴァンギャルド寄りの人と、ベラ・フレック、デレク・トラックスというルーツ・ミュージック寄りの人を連れてきている。どの人もマッコイとは毛色も世代も違うが、ジャズをよく理解していて柔軟性抜群という点では共通するものがあり、御大にうまく合わせながらも「聞いていると途中で飽きる」というマッコイ・ミュージックの難点をうまくカバーしていると思った。個人的にはベラ・フレックとの共演が、バンジョーの音色のおもしろさもあって一番楽しめた。

マッコイのピアノに絞って言えば、目立った衰えはないにせよもう古希なのは確かなわけで、力強さという点ではかつてに及ぶべくもない。タッチもずいぶん柔らかくなったなあという印象。ただ、どちらかと言えばそれは良い方向に働いていると思う。何せ昔は前進あるのみでしたんで…。また、付録のDVDで、5人との録音風景を映像でも楽しむことができるのはうれしいおまけ。