My Human Gets Me Blues

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2006-07-01 [長年日記]

_ [Movie] 鮫肌男と桃尻女

鮫肌男と桃尻女 [DVD](石井克人/望月峯太郎)

1999年、石井克人監督。浅野忠信主演。映画好きなら何をいまさらという感じなのでしょうが、私は最近になって初めて見ました。邦画、ことにアクションものは絶望的につまらない(お金かけられないから)と思っていたのですが、私が間違っておりました。恐れ入りました。

タランティーノのエピゴーネンと言ってしまえばまあその通りなのだが、ここまできっちり真似られればそれは一つの個性だと思う。明るくカラっと残忍冷酷というのが個人的にかなりツボ。桃尻(かわいい)やタヌキや山田くんや変態ホテルマンは黙っていても目に入るでしょうから他の見どころを一つだけ挙げると、地味で愚鈍でよく働く残虐バット男(誰かと思ったらお笑い芸人の堀部圭亮なのね)がいい味出してる。おすすめ。


2006-07-02 [長年日記]

_ [Music] In Carterian Fashion / James Carter

In Carterian Fashion(James Carter)

このままだと、ジェームズ・カーターの最高傑作は結局デビュー直後にDIWに残した二作(JC on the Set(James Carter)Jurassic Classics(James Carter))でしたね、おしまい。ということになってしまいそうである。本当にもったいない。80年代のチコ・フリーマンから始まって、カーターと言い、ゲイリー・トーマスといい、キャリアの初期にあれだけ素晴らしい作品をものに出来た若手サックス奏者たちが、90年代中盤以降急に失速してしまったのはどうしてなんだろう。不思議で仕方がない。

このアルバムはそんな「DIW後」のカーターの作品の中では割と気に入っているほうで、今日ふと聞き直してみたら記憶よりもだいぶ良い出来だったので紹介する気になった。全編聞き通すと若干単調な感じが拭えなくもないのだが、ニューオリンズの盲目の名手、ヘンリー・バトラーを含むサイドも手堅く固めていて、なによりサックスの音色とオルガンとの相性が抜群に良いのがうれしい。ジョシュア・レッドマンもここのところオルガンを加えたトリオで活動しているが、さすがにこの手の編成ではジョシュアよりも堂に入った吹きっぷりだと思う。もうあと一ひねりできれば大傑作になったかもしれないのにね。


2006-07-18 [長年日記]

_ [Food] ラーメン二郎 ひばりが丘駅前店

以下の2店に行ったのは実のところずいぶん前の話なのですが、忘れないうちに。

二郎あるところ必ず店に入り、ほぼ一週間に一度はあのケミカルを食べていた。そんな時期がわたくしにもありました。二郎はラーメンではございません。あれは二郎という食い物でございます。二郎がそもそもなんなのかわからない方は、Wikipediaのエントリでもご覧になればよろしいかと。

ただ、ここしばらくはあらゆる二郎(含むいごっそう@武蔵関)から足が遠ざかっておりました。理由は簡単でして、二郎系を食べると翌日激甚なる胃痛と体の痒みで悶絶するからであります。嗚呼なんということでありましょうか、わたくしの体はいつしか小ぶたにすら耐えられぬほどの軟弱老廃を示していたのでありました。

とかいう話はどうでもよくて、うちの近所のひばりが丘にいきなり二郎が進出したというので見に行ってきた。地図にもあるように、パルコの前の通りを下ればすぐぶちあたる。行ったのは先々週かそこらだが、昼時だと結構な列ができていた。店の外で並ぶので暑い。ちなみに店内は二郎にしては衛生的だと思う。もちろん食券制。

例によって小ぶた(750円)を注文。うん、普通にうまいです。麺良しぶた良し野菜良し(ついでに接客も良し)。特に何も言うことがない。言うことがないので若干つまらない、そんな気分なのでした。ちなみに小であってもお嬢さんやお子さんは絶対に食いきれない量なので、オイタしちゃだめよ。しかし、この手の田舎の立地で日曜祝日が休みというのはいかがなものか。

ラーメン二郎 ひばりが丘駅前店

東京都西東京市谷戸町3-27-24 ひばりヶ丘プラザ1F

Tel. 0267-45-5208

営業時間 11:30-13:30 / 18:00-21:00

日祝休

_ [Food] 麺屋 井の庄

mrmt先生がちょっと前になかなかの店と書いていらしたので、行ってみる気になった。駅前と言えば駅前で、良い立地と言えばまあそう言えなくもないのだが、なにせパチンコ屋の地下の飲み屋街、しかもここ以外はいかにも景気悪そうな店ばかりというすたれた感じなので、一見さんは入るのを躊躇しそうである。ちなみに私が行った時は、そんなに遅い時間でもないのにこの店以外全てシャッターを閉めていた。流行ってない感が炸裂。

食券制。味玉らーめん(780円)を注文。豚骨と魚介系を合わせたかなりしょっぱめのスープだが、なかなか悪くない。悪くないどころか、下手をすると全部飲んでしまいそうな口当たりの良さ(でも全部飲むと確実に体を壊すと思う)。麺は平打ちで何も言わないと若干固め、スープとの馴染み具合はちょうど良い感じ。チャーシューもかなりの厚みのものが入っていて、味も良い。メンマもいける。ということで全体にこれまたケチのつけようがない。あえてつけるならどっさり盛られる鰹節かもしれないが、まあこれはこういうもんでしょう。近所に住んでいるならおすすめ。閉店時間がもう少し遅いとなお良いのだけれど…。

麺処 井の庄

東京都練馬区石神井町3-25-21 ライオンズプラザ地下1階

Tel. 03-3997-1631

営業時間 11:30-15:00 / 19:00-21:00

木曜休


2006-07-27 [長年日記]

_ [Music] In Philadelphia 1960 With Steve Lacy / Thelonious Monk

IN PHILADELPHIA 1960 WITH STEVE LAC(THELONIOUS MONK)

ブラウニーとドルフィーの共演(TOGETHER RECORDED LIVE AT DOLPHY'S(CLIFFORD BROWN/ERIC DOLPHY))など、怪しさ100%な発掘音源をこのところ怒濤の勢いでCD化しているRare Live Recordings (RLR)が、またヘンなものを繰り出してきた。今回は、ありそうで実はなかったセロニアス・モンクとスティーヴ・レイシーの本格的な共演記録。

実はこのCD、年代もメンツも異なる5つのセッションの寄せ集めなので、レイシーが入っているのは冒頭に収録された1960年フィラデルフィアでの放送録音、時間にして20分弱だけ。正直タイトルにするほどの分量じゃないだろうと文句も付けたくなるがそこはそれ、他の4つもなかなか興味深いものばかりなので、個人的には別に構わんです。

モンクとレイシーの共演というとBig Band and Quartet in Concert(Thelonious Monk)があるにはあるのだが、ここでのレイシーはあくまでもビッグバンドの一員という位置づけなので、ソロも無ければモンクとの絡みも一切ない。一方、今回初めて日の目を見たこの録音では、ソプラノのレイシーとチャーリー・ラウズ(ts)という二管編成(考えてみたらこれもずいぶん不思議な組み合わせやね)なので、ちゃんとソロも取る。晩年はフロント(たいていラウズ)がソロを吹いている間ピアノを弾かず、手を休めてしまうことが多かったモンクだが、ここではちゃんと伴奏をつけてフロントを鼓舞している。なお、最後に出てきてアナウンスするのはなぜかルイ・アームストロング。音質は、この時期の放送録音にしてはまあまあ。ロイ・ヘインズがドラムスに座ってバシバシ叩いているのもうれしい。

次はサド・ジョーンズ(tp)とラウズがフロントの1957年のニューヨーク録音。個人的に好きで良く聴く5 by Monk by 5(Thelonious Monk)とほぼ同じメンツなのだが、データを信じるなら2年早い。ラウズとの共演という意味でも最初期に当たる。どこかは分からないがかなり大きめのホールでの録音で、音質はとても良く、ライヴでLight Blueを演っているのも結構珍しい。

次は滅茶苦茶レアな1948年の放送録音。アイドリース・シュリーマン(tp)のワンホーン、アート・ブレイキー(ds)がドラムスという、Genius of Modern Music, Vol. 1(Thelonious Monk/Sahib Shihab/Art Blakey)Genius of Modern Music, Vol. 2(Thelonious Monk/Sahib Shihab/Milt Jackson/Art Blakey)にも参加した連中が付き合ったこれまたニューヨークでのライヴで、 ミントンズ以降の初期モンクのライヴがどのようなものだったのかがよく分かる。といっても結論は、後年とほとんど変わらないなのですが…音質は予想外に良い。これは今回が初登場の音源。

4番目は1955年、スティーヴ・アレンのTVショウに出演したときの演奏。当時のテレビの音声を録音したものなので音質的にかなり辛いものがあるが、これまたメンツが珍しく、フロントはアート・ファーマー(tp)になんとハンク・モブレー(ts)、ベースはミンガス、ドラムスはブレイキーという中途半端なジャズ・メッセンジャーズのようなクインテット。Well You Needn'tで、モンクがカリプソ(?)みたいな変なソロを取るのが面白い。なお、私の勘ではこのテープの大元の出所はフランシス・ポードラのコレクションじゃないかと思う。これも今回が初登場。

一番最後は、1950年、モンクがフランキー・パッションズというあんまりぱっとしない歌手のデモ録音に付き合ったときの貴重な演奏。これは最初パッションズの友達が運営していたWashingtonという自主レーベルからSPで出て、70年代にはSpotliteのCool Whalin'というオムニバスLPで一回だけリイシューされた物だが、今となってはどちらもとてもレアなのでCDでの復刻は大変ありがたい。従来トランペットはケニー・ドーハム、テナーはラウズだとされることが多かったのだが、このたびアイドリースとラッキー・トンプスンであることが判明した。ご丁寧なことに歌詞までライナーに印刷されている。というか、ライナーもブートまがいの割になかなか情報が充実していて勉強になります。

結論。これはモンク秘宝館だ。モンクが好きな人にはおすすめ。そうでなければ全くおすすめいたしません。買っても損はしないと思うけどね。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

_ Shaolin [mhatta氏サンクス。大急ぎでゲトするずら。]

_ mazurkja [description fZOurBDyB3pC http://tinyurl.co.uk/foks]


2006-07-28 [長年日記]

_ [GNU] 新しいGPLv3 & LGPLv3 draftsが出た

ということで、OTPのjournalに書きました。読んでね。

_ [OTP] My OTP journal

ここでアナウンスするのをすっかり忘れていたのですが、ここのところOTPのjournal機能を使って、細々と日記を書いています。tDiaryを使っていた旧jlc diaryよりトラックバックが飛ばせないなど機能的にしょぼいのですが、まあ仕方がない。

オープンソースだのフリーソフトウェアだのについての話は主にそっちでやっております。どうぞごひいきに。

本日のツッコミ(全1件) [ツッコミを入れる]

_ mazurkja [description fZOurBDyB3pC http://tinyurl.co.uk/foks]


2006-07-29 [長年日記]

_ [Music] Complete Live At The Five Spot 1958 / Thelonious Monk Quartet with John Coltrane

COMPLETE LIVE AT THE FIVE SPOT 1958(THELONIOUS MONK QUARTET WITH JOHN C)

去年の春、忽然と姿を現したThelonious Monk Quartet with John Coltrane - At Carnegie Hall(Thelonious Monk/John Coltrane)の発掘には本当に驚かされた。モンクとコルトレーンというジャズ史上屈指の巨人のキャリアを事実上スタートさせ、当時から極めて高い評価を得ながらも、契約上の問題でついにまともなライヴ録音を残すことが出来なかった伝説のクワルテットの音源が、録音から半世紀近くを経て、全く誰にも知られぬまま、しかもあそこまでの高音質で残っていたというのは奇跡としか言いようがない。

ただ、個人的な好みを言わせてもらえば、このクワルテットのレギュラー・ドラマーだったシャドウ・ウィルソンは堅実なタイム・キーパーではあるけれども、地味すぎてスリルに欠ける。モンクと最も相性が良かったドラマーはアート・ブレイキーだったと思うが、ブレイキーのように押さえるべきところは押さえつつも、あの手この手で派手にバンドを煽ってくれる人が後ろにぴったり張り付いていると、演奏の熱気が2、3℃は軽く上昇するのだ。

ところで、モンク〜コルトレーン・クワルテットの音源が日の目を見たのは、このカーネギー・ホールでのライヴが初めてではない。当時のコルトレーン夫人だったネイーマが、ライヴハウス『ファイヴ・スポット』に長期出演中のクワルテットの演奏を客席からポータブル・テープレコーダーで録音していたものが、1993年にLive at the Five Spot(Thelonious Monk Quartet/John Coltrane)として発表されている。ただ、何せ素人が録ったものだけに音質的にかなり厳しいものがあり、しかもまずいことに最初に出たCDは半音くらいピッチが高くなっていて、聴いていて気持ちが悪くなってくるような代物だった。おまけに後年の調査で、実はこれはコルトレーンがレギュラーとしてクワルテットに参加していた1957年の録音ではなく、その1年後の1958年9月11日、当時はレギュラーとしてジョニー・グリフィンを擁していたモンク・クワルテットに、グリフィンの代役としてコルトレーンが客演したときのものらしいということが判明している。ようするに、もう二人が袂を分かった後の録音だったのですね。今回紹介するCDは、このネイーマ録音の音源のピッチを修正し、かつ二曲ボーナストラックを追加した再発盤である。

音質面に関しては、古いCDはもうずいぶん前に叩き売ってしまったので今比較することができないのだが、記憶の中のあのCDの音質よりはずいぶん良くなっているような気がする。と言っても、元が元だけにお世辞にもハイファイとは言えないのだが、少なくとも各楽器の音の分離は良くなっているような気がするのだ(ベース・ラインもきちんと聞こえる)。リマスター万歳。ちなみに、『ファイヴ・スポット』の当時のピアノの調律は一貫して狂っているので、ピアノの音がキンキンと変なのは録音のせいではない。いずれにせよ、今回は聴くに耐える音質と言っても良いと思う。まあ、慣れていない人には辛いかもしれませんが…。

演奏そのものに関しては、ドラムスがシャドウ・ウィルソンではなく、モンクともコルトレーンとも相性の良いロイ・ヘインズというのが大きい。ブレイキー同様、ヘインズも煽り系のドラマーなので、例によってバシバシと果敢に攻め込んでバンドを前へ前へと牽引している。一体感やレギュラー・バンドならではのまとまりこそあれ、ややよそ行きという感じだったカーネギー・ホールでのかしこまった演奏よりも、勝手知ったるジャズ・クラブで(しかもゲストという気楽さで?)後先考えずに吹きまくっているコルトレーンのほうがかっこいいと私は思う。モンクもいつになく弾けており、異様なノリの良さを見せている(例えばEpistrophyの出だし)。なにより、音質のせいもあって全体的にアナーキーなやけっぱち感が漂っているのがたまらない。私にとって、ジャズの魅力とはこういうもののことだ。

ところで、今回追加された二曲のボーナストラックだが、これは謎の多い音源である。これは去年、モンクの息子のT.S.モンクが運営するThe official Thelonious Sphere Monk Websiteに突然アップロードされたもので、なぜかすぐ消されてしまった。噂では、モンクを始めとするジャズ・ミュージシャンたちの後援者だったパノニカ・ド・ケーニグスウォーター男爵夫人が、ネイーマ同様個人的に録音していた、1957年のモンク・クワルテットの演奏だと言う。実際ドラムスを叩いているのは、どう考えても(スネアを多用する)ロイ・ヘインズではなくシャドウ・ウィルソンだし、コルトレーンの演奏もどちらかと言えば1957年ぽい。パノニカ男爵夫人のコレクションは、男爵夫人が住んでいた家に猫が多く住み着いていたことから"Cat House" Tapesと呼ばれており、なんでもパーカーとモンクのライヴの場における共演や、ショパンなどクラシックを華麗に弾くモンク、あるいはモンクとソニー・クラークやバリー・ハリスとの連弾など珍妙不可思議な音源が250時間ぶん以上も遺されているらしいのだが、ほとんど日の目を見ていない。たぶんモンクとコルトレーンの共演音源もまだまだあるのだろう。早く聴いてみたいです。