My Human Gets Me Blues

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2008-04-30 [長年日記]

_ [English] LとR

M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究(菊地 成孔/大谷 能生)

たかだかA4 4ページの原稿を、こんな時間(いま朝の4時です)になっても仕上げられないので頭に来た。以下は気分転換というか現実逃避のちょっといい話。

私の昔の英語の先生は、「LとRの発音がきちんとできないと海外ではお米の代わりにシラミが運ばれてくる」というようなことを抜かして生徒を脅かしていたものだ。まあ、確かにLice(シラミ)とRice(米)、LとRで大違いではあるが、ライスと言って実際にシラミが皿いっぱい運ばれてきたら、それは発音どころではなくもっと本質的な意味でヤバいところにきてしまったと観念すべきだろう。それはともかく、LとRは、日本人には発音や聞き取りも難しいが、綴りのレベルでも結構難しい。Light/Rightくらいでもうっかりすると間違える。

以前、Saturday Night Fish Fryという曲のタイトルをずっとSaturday Night Fish Flyだと勘違いしていたという話を書いた。土曜の夜に魚飛ぶ、かと思っていたら実はフィッシュフライ、魚の揚げ物(を食べるパーティ)についての曲だったと言うオチだ。同じ曲名の話だと、ボブ・ディランの有名な作品でIt's Alright Ma (I'm Only Bleeding)というのがある。こちらも私は、実のところつい最近までI'm Only Breedingだと思っていて、漠然と何か家畜でも育てる話なのかなあと思っていたのだが、きちんと歌詞を読んでみたらこれが全然違う内容だ。もちろん、「大丈夫さママ、僕は(ギロチンで首を切られて)血を流しているだけ」ということですね。

そういえば、古典的なコンピュータゲームに「ロードランナー」というのがある。黄金を集めつつ穴を掘って敵を埋めていく(あまつさえ生き埋めになっている敵の頭を踏みつけたりもする)大変非人道的な愉しいゲームで、私も昔はよく遊んだものだが、私が知る限り日本人の80%以上はあれをRoad Runnerだと思っているようだ。もちろん、ただの道ではなく「Lode」、金鉱の坑道を駆けめぐるという設定のゲームなので、Lode Runnerが正しい。

最近だと、菊地成孔/大谷能生の大著M/D マイルス・デューイ・デイヴィスIII世研究(菊地 成孔/大谷 能生)を読んでニヤニヤしてしまった。この本は東大駒場で2005年に行われた、天才音楽家マイルス・デイヴィスに関する授業の講義録をまとめたもので、例によって語り口はとても面白いし、内容がいい加減ということもないのでおすすめなのだが、なぜかpp.531の楽譜に「Recture of Miles」と大書してある。たぶんLectureの間違いだろう。どうやら2002年の講演から同じ譜面を使い回しているようなのだが、誰も指摘しなかったのかねえ。なにせ中盤の目玉、オン・ザ・コーナー(マイルス・デイビス/コリン・ワルコット/ジャック・デジョネット/チック・コリア/ハービー・ハンコック/ジョン・マクラフリン)楽曲分析のカギとなる重要な譜面なので、ものすごく目立つのである。

(2008/5/2 追記)現在のtDiaryの仕組み上、ツッコミを入れた人がご本人かどうかきちんと証明する手段はないのですが(まあOpenIDあたりがもうちょっと普及すれば可能になると思うけど)、この記事についている「菊地成孔(本物です)」さんのツッコミは、菊地成孔さんご本人が書いてくださったものです。その旨別途メールを頂きました。

本日のツッコミ(全5件) [ツッコミを入れる]
_ 菊地成孔 (2008-05-01 00:21)

<br> メチャメチャ指摘されてます(笑)

_ 菊地成孔 (2008-05-01 00:22)

<br> 他にもいっぱい間違えてます(笑)。

_ 菊地成孔(本物です) (2008-05-02 01:01)

<br> さきほど八田さんにもメール差し上げたのですが、上記のお二人(お一人?)はワタシではありません。とはいえ、本物が出て来ても、偽物と言う事がおなじというのは本物ながらどうかと思いますが(笑)。

_ 菊地成孔(本物です) (2008-05-02 01:03)

<br>あ。載せられた。昨日、何度書いてもアップされなかったのでメールを送ったのです。やってみます。昨日書いたものです。↓<br><br> <br> タレコミを受けて駆けつけてみた所、30分以内なので我ながら驚いているのですが、この上のお二人(お一人?)はワタシではありません。証明のしようがないのですが、「はてなダイアリー」のコメント欄(ほかのエリアにもいるのかもしれませんが)にネームドロッパーが出るので、そのつどタレコミがあるのです。<br><br> とはいえ、本人が出て来て言う事といえば、偽物とまったく同じというのもどうかと思うのですが(笑)、メチャクチャ指摘されています。そもそもアレは02年に書かれ(ワタシが書きました)配布されたもので、その段階で会場が大爆笑になっていたのですが、面白いやら恥ずかしいやら、ずっとそのまま使っています(因に、ワタシの著作にあの楽譜が掲載されるのは二度目で、一度目は小さかったので、読者からの指摘が一切無く、寂しい思いをしました。なのでつまり、「ものすごく目立たせた」のです・笑)。エクスァイア書籍部の名誉の為に言いますが、というか、言うまでもありませんが、ああいう本は校正が厳しく、入稿する前の段階で「あのM直しますか?」という相談は受けたのですが「モチロンそのまんまだよ」と言って掲載しています。<br> <br> ワタシの悪趣味と言うか、病気と言うか、ワタシの本にはそうした意図的な間違い(最初は意図的ではなく、単に間違ったのですが)が必ず入っており、いつ指摘されるか、いつ指摘されるかとドキドキしながら暮らしているのですが、あまり指摘されません。特にあの本は厚いので、読了した方でないと解らない部分も沢山あり、いつまで経っても指摘されないのではないかと不安になっていまして、こういうことを自ら書くのは身を切る思いなのですが(笑)たとえば ↓<br><br>P.297「1962年の3月27日、あとちょうど2ヶ月で不惑を迎えんとするマイルスに」<br><br>とありますが、マイルスは1926年生まれですから、まだ不惑には達しません(笑)。<br><br> これも最初に間違えて入稿したものを指摘され「そのままにしてくれ」と言って載せた形です。そして、そのことはまえがきで断ってあり(P11)、我ながらキチガイではないかと思うのですが、コレがやめられないのですね。別の本には50セントが西海岸のラッパーだと堂々と書いてあるのですが(酷い)、これの指摘は4通しか来ませんでした(笑)。弁明ではありませんが、それがそのまま信じられてしまったとして、誰かが傷つくとか、ワタシが得をするとか、主旨がいたずらに強化されるとか、そういった誤記を放置する事はしません。「バカじゃないのか?」というようなモノばかりです。<br><br> 最後に成りますが、お買い上げ&御高評ありがとうございます。最近だと、アン・リー監督の「ラスト・コーション」が「LAST(最後の)・コーション」だと思われがちですね。それでは失礼します。

_ 菊地成孔(本物です) (2008-05-02 02:11)

<br> しまった(笑)。「あのM直しますか?」じゃないですね。「あのR直しますか?」です(笑)、こういうのを、そのまま載せてしまうことに性的な執着があるのですね。大変お騒がせしました。今度こそ失礼致します。