2008-04-28 [長年日記]
_ [Music] Gumbo! / Booker Ervin, Pony Poindexter & Larry Young
今更ながら、音楽プロデューサーのオジー・カデナ(Ozzie Cadena)が亡くなっていたことに気づいた(NY Timesの追悼記事)。70年代以降は西海岸に引っ込んで悠々自適、83歳の大往生。こうしてNYTにObitも載り、総体としては悪くない一生だったようである。
カデナの仕事として一般によく知られているのは、50年代を通じて雇われA&Rマンとして采配を振るったサヴォイ(Savoy)・レーベルの諸作だろう。財布のひもが大変に固い頑迷なオーナー、ハーマン・ルビンスキと人材難に悩まされつつも、カーティス・フラーのブルースエット(カーティス・フラー)を筆頭に日本でも馴染み深い数々の名盤を送り出すことに成功している。プロデュースに際立った個性はない(出さない)代わり、子供のころから養った黒人音楽への見識を活かし、押さえるべきところは押さえた弛みのない音づくりを心がけていたようだ。そのせいか、カデナが手がけたサヴォイ盤は、ジャケのデザインが揃いも揃ってマヌケでも、全然聞いたこともないようなマイナーなリーダー/サイドメンの作品であったとしても、完全な大ハズレということは少なく、それなりに聞き所があることが多いのである。
ということで、カデナを偲んで何かサヴォイのアルバムを一枚挙げようかとも思ったが、サヴォイを辞めたカデナが次に行ったのがプレスティッジ・レーベルで(エズモンド・エドワーズの後任)、しばらくコテコテのソウル・ジャズもプロデュースしていた、というのはあまり知られていないようなので、そのへんからこれを引っ張り出してみた。ブッカー・アーヴィンのリーダー作のように見えるが、本来はポニー・ポインデクスター名義の作品である。
放っておくと垂れ流しというか締まりのない演奏に終始しがちなポインデクスター(とアーヴィン、アル・グレイ)に、ポインデクスターの出身地ニューオリンズという明確なテーマを与え、軽快で華やかな演奏に仕立てている。オルガンも入っていないし(ちなみにピアノはギルド・マホネス)、この作品に関して言えばとりたててコテコテというほどではないのだが、率直に言って二線級な人材をかき集め、かつ各人の長所(例えばポインデクスターは非常に情景描写的な良い曲が書ける)を活かしてなかなかの聞き物に仕立てるというあたりが、非常にカデナ的だと思う。
おまけとしてアーヴィンやグレイ抜きの演奏が3曲、こちらはポインデクスターがいかにも垢抜けない歌を歌っていたりして絶望的にぱっとしないのだが、最後に今度はポインデクスター抜きの、アーヴィンのオルガン・トリオによる完全未発表録音が5曲も入っていて、こちらは思わぬ掘り出し物だ。アーヴィンの相方のオルガンというとドン・パターソンというイメージが強いのだが、ここではなぜかラリー・ヤングと一緒に演っていて、これが非常にカッコいい。レパートリー的にも、たぶん他にヤングによる録音は存在しない「枯葉」「オールド・フォークス」あたりを演っているので、後年「オルガンのコルトレーン」の異名を取ったヤングがこの時期この手の曲をどう料理しているか、そういった点でも興味深いと思う。