2011-10-19 [長年日記]
_ [Jazz] I'll Be Glad When You're Dead, You Rascal You
平野達男という人が今復興担当大臣なんだそうで、彼が大震災の津波で亡くなった友人に関し、「私の高校の同級生のように逃げなかったばかなやつもいる。彼は亡くなったが」と言ったらしい(毎日新聞の記事)。それがけしからんということで、いよいよ野党アティテュードが板についてきた自民党が国会で追及するそうである。
こういうのは口調次第でニュアンスががらっと変わるわけで、あいつはばかだから死んだのだうははははざまあみやがれという意味だったのかもしれないし、親友への万感の惜別の情を込めて語ったのかもしれない。常識的には後者なんじゃないかと思うが、まあ、なんというか、もうどうでもいい。今回の件に限らず、メディア関係者を含めたこの国の国民の大多数はもはや手の込んだ修辞やそこに込められた複雑な感情を理解することが出来ないので、あきらめてすべてストレートにしゃべるのが良いと思う。かなしいです。ざんねんです。よくできました。
それはそうと、私がこの話を聞いて最初に思い出したのは、沢木耕太郎のエッセイ集「バーボン・ストリート」に収録された一篇「死んじまってうれしいぜ」だった。というか、平野氏の元ネタもこれなんじゃないのかね。
初めてロスアンゼルスに行った時の旅で、私はニューオリンズにも寄った。そして、賑やかなフレンチ・クォーターで何度かデキシーランド・ジャズを聞いた。そのフレンチ・クォーターでも最も繁華な通りであるバーボン・ストリートの、いかにも安っぽそうな店で聞いた陽気な数曲の中に、恐ろしく長い題名の曲があった。
I'll Be Glad When You're Dead, You Rascal You!
日本に帰って調べてみると、驚いたことにそれは葬送の曲だった。レコードで聞き直してみたが、それはニューオリンズで聞いたものよりさらに陽気に演奏されていた。ジャケットによれば、葬式が終わり、墓場から帰ってくる時の行進用にアレンジされているということだった。題名は訳せば次のようになる。
お前が死んじまって俺はうれしいぜ、この馬鹿野郎が!
ここには強い語調の底にたたえられた深い悲しみがある。うれしいぜという言葉には、天国に行かれてという意味が含まれているらしいが、むしろ反語としての意味の方が大きいように思われる。男が男を葬送する時の惜別の辞として、恐らくこれ以上のものはない。
たとえ一瞬のうちに了解し合えるような男と巡り会わなくとも、自分が死んだ時には、『死んじまってうれしいぜ、この馬鹿野郎が!』といってくれる友人を、ひとりくらいは持ちたいものだと思う。私にとって最大のオトギバナシとは、きっと、そういったところにあるのだろう。
縮めて「You Rascal You」というタイトルでも知られるこの曲は、伝統的なニューオリンズの葬式では「聖者の行進」と並び、葬式からの帰路に明るく演奏されるようである。サッチモやルイ・プリマの録音が代表的だ。歌詞にはいろいろなバージョンがあり、大方はきわどいスケベな歌詞(嫁を寝取りやがってこの野郎的)なのだが、やや穏当なものとして、例えばルイ・プリマはイタリア系なのでこんな風に歌った。
お前が死んじまってうれしいぜ、この馬鹿野郎
お前が墓に入ってうれしいぜ、このろくでなし
死んで墓に入ったお前は、もうラビオリを欲しがらないだろうな
お前が死んじまってうれしいぜ、この馬鹿野郎
お前が墓に入ってうれしいぜ、このろくでなし
お前を家へ食事に呼んだら、俺のミートボールを全部盗もうとしやがった
ああ、ろくでなしめが
お前が死んじまってうれしいぜ、この馬鹿野郎
お前が墓に入ってうれしいぜ、このろくでなし
連中がお前の棺を運ぶとき、俺はそこらで飲んだくれているよ
ああ、クソ野郎めが
お前が死んじまって、ほんとに、ほんとに、ほんとに、うれしいぜ、この馬鹿野郎
お前が死んじまってうれしいぜ、この馬鹿野郎、ああ
Retweetしますね。
突然すみません<br>ツィッターで引っ張らせて下さい<br><br>自分も、この話を思い出したんです・・・
別に許諾は要りませんけど、どうぞ。
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