2011-09-27 [長年日記]
_ [Jazz] The Last From Lennie's / Jaki Byard
ジャズの世界で器用貧乏と言えば、ジャキ・バイアードの右に出るものはいない。ピアニストが本業で圧倒的なテクニックを有しているが、ピアノ以外にサックスからトランペットまでプロ並みに吹く。ピアノ・スタイル的にも、ラグタイムからフリーまで何でもこなす。ちょっと聞けば誰でもジャキのピアノだと分かる、かなり強烈な個性もある。聞くたびにつくづくうまいなあとは思うのである。しかし、にも関わらず、少なくとも個人的には、ジャキの演奏を聴いて心が根底から揺さぶれたという経験は無い。ミンガスの60年代の録音(特に64年のドルフィー入りヨーロッパ・ツアーの音源)を追いかけると必然的にジャキの演奏と多く接することになるのだが、ここまで何でも出来るのに、聞いた後ここまで何も残らない人というのも珍しいように思う。
しかし、にも関わらず、私はジャキという人が結構好きである。私もピアノを弾くので、ジャキの実力の尋常でない高さが身にしみて分かるというのもあるけれど、何でも手を出すが全ての分野で一流半、みたいな在り方にどこかシンパシーを感じてしまうのだ。
これは1965年のライヴ録音で、元々Live!(Jaki Byard Quartet)として出ていたものの未発表残りテイクを集めたもの。バイアードと並ぶジャズの器用貧乏王ジョー・ファレルを迎えたカルテットの演奏で、なんというか、通して聞くと相当お腹いっぱいになる重量級のジャズである。しかし演奏している人たちが全員超が付くテクニシャンなので、全く胃もたれしない。
このところ忙しくて音楽を聴くどころではなかったのだが、こういうのを聞くと、やはりジャズはいいなあ、としみじみ思うのだった。