2010-05-23 [長年日記]
_ [Jazz] Star Highs / Warne Marsh
1987年の暮れ、出演中のクラブのステージ上で「Out Of Nowhere」を演奏中に倒れるという劇的としか言いようがない死を迎えたウォーン・マーシュは、好きな人はひたすら好きだし、嫌いな人はひたすら嫌いという、好みがはっきりと分かれる人だと思う。私はというと、好きは好きなんだが、なぜか体調によってはついて行けないことがたまにある。うねうねとマシュマロというかワタアメのごとくつかみどころのないソロ・フレーズ自体はいつ聞いても特に気にならないのだが(むしろ気持ち良い)、リズムへの独特のノリには、ついて行けるときと行けない時があるのだ。
とは言えこの1982年録音のアルバムなんかは誰がいつ聞いてもあまり違和感ないのではないかと思うが、その理由はたぶん安定感抜群のリズムセクションにあるのだろう。ハンク・ジョーンズ、ジョージ・ムラーツ、メル・ルイスという組み合わせは当たり前なようで割と珍しいはず(ベースとドラムスはたぶんメル・ルイス・オケの巡業でヨーロッパに来ていたんじゃないかと思うのだが、ピアノはなぜハンクだったのだろう?)だが、とにかくマーシュが何を仕掛けてきても全くペースを乱さずに平然と対応してしまうので、こちらは落ち着いて聞いていられるのである。マーシュはドラマーにメトロノームのごとき硬直したリズムキーピングを要求したことで悪名高いが、メルのようにきっちりリズムを堅固に維持しつつ多彩なおかずを取り混ぜて攻め込んでくる人なら、喜びこそすれ特に文句はなかったに違いない。個人芸では、「Moose The Mooche」でのハンクのソロが実に素晴らしい。