2007-11-01 [長年日記]
_ [Music] Witches, Goblins, etc. / Sadik Hakim
ヒルトン・ルイスのあれと時を同じくして、これもひっそりと日本盤が出ていた。SUBURBIAxSteepleChaseという企画らしいが、よりにもよってこれを選ぶか。えらいぞ橋本徹。
スティープルチェイスのピアノ・トリオものと言うとすぐケニー・ドリューかテテ・モントリューかという話になってしまいがちだが、むしろこういう目立たない奴に思わぬ掘り出し物が多い。このサディク・ハキムも元はチャーリー・パーカーやデクスター・ゴードンとの共演・録音経験を持つビバッパーで、1950年代以降はカナダに移住したり放浪の生活を続けていたらしい(来日経験もあるはず)が、プロデューサーのニルズ・ウィンターは元はといえば晩年のバド・パウエルのライヴに通いつめていたようなバップ馬鹿なので、このへんのバップ・サバイバーに対する審美眼は確かだ。この人は最後まで共演者に恵まれなかった人で、残っている数少ない録音の大半はろくでもないベーシストかろくでもないドラマーと組んでいるのだが、ここではベーシストはともかくドラマーがアル・フォスターなので安心して聞いていられる。
ピアニストとしてのこの人の特徴はセロニアス・モンクやエルモ・ホープに近い珍妙不可思議なハーモニック・センスで、これは1940年代当時の録音からずっと変わらない。明らかにパウエル以降のバップ・ピアノの語法を踏襲してはいるのだが、それだけでは括れない個性がある(まあ、単純にテクニック面がかなり怪しいというのもあるんだけど)。そしてこの手のピアニストの常で、なんとも良い曲を書く。フレディ・レッドとか、(質的にかなり違うけど)マル・ウォルドロンとか、そのへんを思い浮かべれば当たらずとも遠からずでしょう。このアルバムでも全てを自作で通していて、どれも魅力的なメロディーを持つ個性的で良い曲ばかりである。特にタイトル曲は小林陽一がどこかで演奏していたはずで、名曲と言って恥ずかしくないものだと思う(そのときはBosamiというタイトルじゃなかったかな?)。
_ [Obit] itojun氏逝去
急なことで言葉もない。おくやみのようなものを書きました。