2004-07-26 [長年日記]
_ [Reading] 現代思想の冒険 / 竹田青嗣
最近では、古本屋で仕入れた文庫本を、とうとう風呂の中で読むようになった(ちゃんとタオルを準備しておけば本は濡らさずに済む)。いよいよ人生お先真っ暗という感じだが、悪癖にも一つくらいは良いところがあるもので、一日一冊くらいのペースで、これまであまり積極的に読む気になれなかった思想だの哲学だのといった関係の本を読むようになったのはちょっとした収穫だと思う。これもそのうちの一冊。さっき読み終わりました。
素人にも大変わかりやすい、哲学(必ずしも「現代思想」に限らない)への入門書。デリダやドゥルーズ、ラカンやロラン・バルトといった大物は大概出てくる。単なる学説の羅列ではなく、そもそもいわゆる「現代思想」というのが何を語る(騙る?)ために登場したのかという問題意識で貫かれているので、話の筋が追いやすい。
以前、山形浩生さんがCUTの「知の欺瞞」の書評で、現代思想における自然科学の濫用や間抜けな言及は、比喩とか洒落とかファッションに過ぎないんだからとやかくいうな、という向きに対し、
でもそれならぼくがぜひとも読んでみたいのは、こうしたこけおどしの濫用科学用語やレトリックをすべて取り除いて翻訳した、各種「ポストモダン」思想家どもの文章だ。いったいそこには何が残っているのだろうか。あの葉っぱの散り落ちた枯れ野には、実は本当に美しい花がひっそりと咲いていたのかもしれない。できることならぼくはそれが見たい。でも、かなりの確率で不毛の荒野に出会うだけのような気がして、まだこわくて見ていない。
と書いていた。この本に(かなり批判的ではあるが)書いてある内容というのが、おそらくポストモダンの本当の「花」だったのだろう。ただ、それは結局のところヘーゲルからマルクスあたりで極点に達した近代思想の解体という文脈の中でしか輝かなかったということなのではないか。
まあ、年齢的にニューアカとか軽薄ポモとかの洗礼を受けていないので、しょせん他人事という感じも否めないのだが。
その手の本だと文春新書 内田 樹 「寝ながら学べる構造主義」 ISBN4-16-660251-9 が面白かったな。
matznagaさん、その本もそのうち買ってみましょう。でも、風呂本は私には選択権ないんですよ。ブックオフの105円均一コーナーにあるかないかという問題で。