2015|08|
2004-07-14 [長年日記]
_ [Reading] ヨーロッパ社会思想史 / 山脇直司
別の本を探して本棚をごそごそやっていたら、この本を見付けた。大昔、駒場にいたころに山脇先生の授業を受けたことがあって、これが絶望的につまらなかったのだが、今になってそのときの教科書であるこれを読み返してみると(なにせ200ページ弱しかないのですぐ読めてしまう)、なかなかよくできた本であることに気づいた。まあ、結局授業が終わった後からが本当の勉強ということなんでしょう。
内容的には、西洋で一時代を画した思想のさわりを時代で区切って簡潔にまとめたというだけの入門書だが、昔のえらい学者の思想をただ順番に陳列するのではなく(授業はそういうのだったと記憶しているが)、連中の考えが現在の私たちにとってどういう意味を持つのか、という問題意識で貫かれているのが良いと思う。とりあえず思想っぽい話で議論したいときの土台作りには最適か。
うーん。大昔の講義でも古典思想の現代性は語ったつもりだったけど、伝わらなかったかもーー。講義も段々慣れてきたので今の学生には伝わっているかもしれない。当方、現代の状況にコミットする気持ちは旺盛なので、その一環として最近出した単著『公共哲学とは何か』(ちくま新書)や編著『グローバル化の行方』(新世社)を読んで感想を聞かせて下さい。
山脇先生、「公共哲学とは何か」をざっと拝見しました。感情的なレベルでは、先生の志は佳しとしたいのですが、内容的には、経済学に言及されたくだりも含め、相当厳しいことを言わざるを得ないと思います。感想はもう少しお待ちください。
新書は、どこまでも一般向けの本なので、この場で論争したくはありません。それに公共哲学は社会的コミットメントなしに論じてもあまり意味がないと思います。なお、特に経済学のくだりに関しては、この本とは別な問題設定が必要で、そうした前提・状況ならばデスマッチしてもよいです。ちなみに私はもともと近代経済学の出身で、指導教官の塩野谷祐一師や同じ弟子の鈴村興太郎とは現在でも研究会などで付き合いがあります。なお、私の別の小著『経済の倫理学』丸善で私の経済観を記しておきましたのでご参照下さい。ところで貴方の学問観を知る上で一つ質問させて下さい。貴方はアマルティア・センを評価しますか?