2004-07-13 [長年日記]
_ [Music] Kwanza / Archie Shepp
最近は、基本的に自宅自室か大学の研究室かに籠って一日中書き物をしているというヒッキー生活なので、BGMの選択が極めて重要になるわけです。で、今日は中古で買ったこの作品を一日中聞いていたのだが、これがまたやばかった。
日本ではシェップと言えばフリージャズ、ということになっていて、しかもフリージャズは定速ビートもなくただ絶叫してるだけの辛気くさいしろものとみなされているので、普通の人にはあっさり敬遠されそうだが、これはフリージャズじゃないのです。ファンクというか、R&Bというか、ソウルというか、そういうもろもろにフリージャズのフレーバを混ぜてシェイクした分類不能の音楽というのが最も正確な形容か。よって、フリージャズ・アレルギーがある方にもかなりお薦め。というか、本当はフリージャズとファンクは根っこは同じだと個人的には思っているのだが、その話はまた他の機会に。
まず1曲めが、曲名どおりバックバックと言っているように聞こえる変なメロディーのどファンクなのだが、なぜかバーナード・パーディがタイコを叩いているあたり、かなりおかしい。しかし猛烈にかっこいい。このダサかっこよさは格別だ。
続く2曲めでは最近亡くなったレオン・トーマスのハロホロヒレハレというヨーデルがやばい。どうでもいいがトーマスは勝新太郎の大ファンだったそうだ。それはともかく3曲めにいたってはシェップ当人がラララララーとか歌っている。多少シリアスな曲調で全体にアフリカ風味が濃厚。
しかし圧巻はなんといっても4曲めで、世界の崩壊をリアルタイムで記録しましたという感じがたまらん。出だしは真っ当なハードバップ風なのに、ドラマー含む全員のリズムが次第にずれまくっていく。必死に左手のオスティナートのパターンをキープして破綻を食い止めようとするシダー・ウォルトン(そもそも微妙に場違い)がけなげでかわいい。というかこいつらほぼ全員何らかの薬物を決めて演奏していたに違いない。リズムをキープするとか穏当にウォーキングするなんて気がハナからなさそうなウィルバー・ウェアのベースにしびれる。本物の天才か変態だ。
最後のBakaiはコルトレーンも取り上げたカル・マッセイの曲で、白人女性に話しかけたというだけで一晩リンチされて射殺され川に投げ込まれた黒人の男の子を悼む荘厳な曲なのだが、相当複雑な曲構造とコード進行を完全に咀嚼して律義に演奏していたコルトレーンと違い、テーマ以外はほとんど一発もののように解釈してひたすら吹きまくるシェップの割り切り方が素晴らしい。
あなたの書きっぷりも相変わらず素晴らしい。壊れてますね。