2012-01-04 [長年日記]
_ [Jazz] R.I.P. Sam Rivers, 1923-2011
昨年末(12/26)にサム・リヴァースが亡くなっていた。享年88歳。
88歳というと普通は引退して老人ホームか墓に入っている年齢だが、リヴァースの場合80代に入っても現役バリバリ、それも「昔の名前で出ています」という感じではなく、平然とトリオやらビッグバンド(リヴビー・オーケストラ)やらを率いて一線でライヴをやっていたので、唐突というかなんだか意外な感じすらした。90年代末にフロリダへ引っ越した後、地元の腕利きを集めて再編した新生リヴビー・オーケストラは、ここ数年フリーからファンクまでなんでもこなすかなり強力なビッグバンドに育っていて、そのうち生でも見たいと思っていただけに、そういう意味でも惜しい。
リヴァースというと、たまたまマイルス・デイヴィスのグループにいたときに来日して録音も残している(マイルス・イン・トーキョーなど)こともあって、日本ではマイルスとの絡みが強調されることが多いが、あれは結局のところトニー・ウィリアムスが強引に引っ張り出しただけで、マイルスの音楽との共通性は元々そんなに無い。世代的にもリヴァースのルーツはコーダルなビバップで、モーダルなジャズの影響をほとんど受けずにいきなりフリーに突入という点ではエリック・ドルフィーと似たような経緯を辿っている。二人ともマイルスに嫌われていたのは興味深い一致だ。
60年以上にも及ぶ長いキャリアを誇るリヴァースだけに、優れた作品はいくつもあるが、個人的に良く聞くのはやはりBlue Noteに残した2枚、ということになってしまう。というかまあ、Beatriceですよね。やはり。
この曲が入っているFuchsia Swing Songはリヴァースの初リーダー作なのだが、1964年の録音だから、41歳のときなんですね。ちょっと驚いた。プロとしての活動は1950年くらいから始めているし、ちゃんとした録音も1961年にタッド・ダメロンのサイドマンとして経験済み(Blue Note録音、お蔵入りしていたがThe Lost Sessionsで日の目を見た)だが、レコーディング・キャリアとしては非常に遅咲きの人だったことが分かる。助走が長かった分、航続距離も長かった、ということなのだろうか。この曲の、叙情的でありながら過剰にベタつかないさっぱりした味わいは、思えばリヴァースの音楽全体に通じた美点だったように思う。