2008-01-01 [長年日記]
_ [Music] Hello Herbie / Oscar Peterson
新年早々湿っぽい話題というのも何ですが。
台湾ではあまりウェブを見る余裕がなかったので、勢い最近の出来事に疎くなっていたのだが、帰国して初めてオスカー・ピーターソンが他界していたことを知った。
ピーターソンについては、4年前書いた内容に付け加えることはほとんどない。素晴らしいピアニストだったと思う。先にも書いた通り、職人的というかウェルメイドを追求した人は往々にして失われて初めて真の偉大さが理解されるものなので、おそらくピーターソンの死の意味は今後数年かけてじわじわとボディーブローのように理解されていくのだろう。ああ、本当にあの巨体のおじいさんはいなくなってしまったんだな、と。
せっかくだし今晩は供養に何かピーターソンの作品を聞こうと思い、たまたま手に取ったのがこれだった。これがピーターソンの超傑作だとか言うつもりは毛頭なく(ただしピーターソンに明らかな駄作はほとんど無い)、今となってはところどころコーニーというか古くさい部分(例えばDay By Dayのアレンジ)も散見されるのだが、私は結構好きだ。村上春樹が以前どこかでピーターソンの演奏ぶりを、畏敬の念に若干の揶揄も込めて「毎日が手抜きなしの鍋焼きうどん」とか評していたが、このアルバムなどはもうこってりとした鍋焼きうどんの極致みたいなもので、絶対にお代の分だけは楽しんで頂きますという徹底したポリシーのもと、その鍋焼きうどん性を遺憾なく発揮した陽性の弾きまくり大会に仕上がっている。録音がいかにもMPSという感じのクリアで明るい音色なのも手伝って、その割り切りぶりはむしろ爽快ですらある。それにしても、一時代を築いた人の演奏には華があった。