2007-11-18 [長年日記]
_ [Music] Don't Give Up On Me / Solomon Burke
仕事しながら久しぶりに聞いたら、不意を突かれてなんだか泣けてきたので紹介する気になった。時間帯が良かったのかもしれない。
ソロモン・バークという人がどれだけ破天荒かは、文中でほぼ主人公と言って良い存在感をまき散らすピーター・ギュラルニックの名著スウィート・ソウル・ミュージック―リズム・アンド・ブルースと南部の自由への夢(ピーター ギュラルニック/新井 崇嗣)を読めば分かると思う。なんというか、ひと口に説明しにくいのだ。サン・ラーもそうだが、私は訳の分からない、ひと口で説明しにくい人が好きなので、当然バークも大好きである。
それにしても、1曲目を提供したのはダン・ペン、2曲目と6曲目はヴァン・モリソン、3曲目はトム・ウェイツ、4曲目はジョー・ヘンリー、5曲目はブライアン・ウィルソン(!)、7曲目はエルヴィス・コステロ、8曲目はボブ・ディラン(!)、そして9曲目はニック・ロウ、しかも単なる連中のヒット曲のカバーというわけではなく、全て書き下ろしの新曲ないし未発表曲をもらってきたというのは、改めて書き出してみると壮観としか言いようがない(最後を飾る11曲目の作者は全く無名の人だが、おそらくバークが変名で書いたのだろう。渋くてとても良い曲)。と言ってもこの手のプロジェクトは幕の内弁当的な無個性の「話題作」程度で終わることも多いわけだが、全体にキング・ソロモンのカリスマが十分浸み渡っているというか、この人が歌う以上、曲やバックがどうあれ結局バークの歌にしかなりようがないので、全体を支配する空気にはおそろしく統一感がある。足が悪いのか(そりゃあれだけ太ればねえ…)もう立って歌うことはできないようだが、「脳天に一撃喰らわせる」としか表現しようがない迫力のある声はまだまだ健在だ。ちなみにギターを弾いているのはダニエル・ラノワ、サックスはベニー・ウォレスとこれも豪華。
普段の華やかな活動よりははるかに渋めの落ち着いた雰囲気なので、そのへんで昔ながらのキング・ソロモン・ファンにはそっぽを向かれたのかもしれないが、これは超が付く傑作だと思う。じわじわと盛り上がって良くなっていくのだな。
というか、もう御託はどうでもいいのでとりあえず10曲目だけでも聞け。これが感動のがぶり寄りなの。ブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマとの共演。