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2007-08-13 [長年日記]

_ [Music] Live at Cafe Montmartre 1966 / Don Cherry

Live at Cafe Montmartre 1966(Don Cherry Quintet)

最近唐突に復活したESP-Diskの新譜。といっても新録ではなく、かつてはMagneticレーベルから出ていたブートのオフィシャル化(?)だ。ジャケット・デザインのセンスはブートとどっこいどっこいですけれども。

内容はと言えば、名作Complete Communion(Don Cherry)の録音直後、デンマーク・コペンハーゲンの名門クラブ「カフェ・モンマルトル」で行ったライヴ。Complete Communion(Don Cherry)はカルテット編成だったが、ここではヴァイヴのカール・ベルガー(彼はSymphony for Improvisers(Don Cherry)等にも入っていましたね)も加わったクインテットでの演奏である。レパートリーも、ブルーノートにおける前掲の2作や、アーチー・シェップらとArchie Shepp & The New York Contemporary Five(Archie Shepp)で演っていたオーネットの曲などを(断片的に)取り上げている。

テナーがガート・バルビエリなのはComplete Communion(Don Cherry)と変わらずだが、ドラムスはフランス人のアルド・ロマノ、ベースは当時「カフェ・モンマルトル」のハウス・ベーシストだったデンマーク人のボー・スティフと、リーダーのチェリー以外は完全に非アメリカ人で固められたバンドになっている。全部で48分弱。デンマーク・ラジオの放送用マスターが元なので、一部アナウンス等も入っているが音質は大変良い。リマスターの効果か、かなり生々しい音とすら言える迫力だ。

一曲の中にいろいろな曲のテーマを詰め込んでインプロヴィゼーションの種にする、という方法論をこの時期のチェリーは採っているのだが、冒頭飛び出して来るテーマが実はオーネットのAt the "Golden Circle" in Stockholm, Vol. 1(Ornette Coleman)の1曲目Face and Placesだったりして、なかなか面白い。Archie Shepp & The New York Contemporary Five(Archie Shepp)と同様、フロントはフリーに吹きまくる一方、リズム・セクションはあくまでがっちりと4ビートをキープしているし、またフロントにしても実は非常にメロディアスなアドリブなので、フリージャズにアレルギーのある人でも違和感無く楽しめるだろう。というか、特にロマノががんばっているおかげで、これはかなり強烈にスイングする音楽である。伸縮自在のバックに支えられて自由に吹きまくるチェリーとガルビエリの音が気持ち良い。

私はチェリーの音楽に対する姿勢が好きだ。いわゆる「ワールド・ミュージック」に接近した(というかチェリーこそが先駆者なのだが)晩年のフュージョンぽい作品もよく聞いているが、やはりこのあたりの、ジャズの根っこは保ちながらもガチガチの黒人至上主義やひとりよがりのフリーキー・ジャズには陥らず、ナチュラルな歌心を頼りに行く先々のミュージシャンと共演を楽しみ、音そのものから自由でノンシャランな空気が立ちのぼるような演奏に愛着がある。発掘は素直にうれしいです。