2007-07-25 [長年日記]
_ [Music] From a Window / Wayne Horvitz
ジョン・ゾーンと組んでハードでキッチュなNaked Cityをやったり、自分の仕切りでソニー・クラークのトリビュートをやったり(結局ゾーンも入ってるのでみんなゾーンのリーダー作だと思っているけれど)、あるいはPigpenやZony Mashといったジャムバンド(?)を組んでごりごりオルガンを弾き倒してみたりと、キーボーディスト、ウェイン・ホーヴィッツも彼の世代のご多分に漏れずいろんなときにいろんなことをやってきた人だが、個人的にはこの作品のような、室内楽的に抑制された表現の中から熱気が遠赤外線のようにじんわり伝わって来るタイプのものが、変な衒いが抜けて素直にたのしめるようだ。肝移植を乗り越えて復活したベテラン・トロンボーン奏者のジュリアン・プリースターが中心のいわゆる「4+1」バンドに、バリトンサックスのスケーリックをゲストとして迎えた編成だが、この二人に加えてヴァイオリンのアイヴァン・カンの存在が良く効いている。曲そのものも良いし、シンセとアクースティック楽器の噛み合わせ方も見事。案外激しいところもあるのだが、全体としては心の落ち着く音楽である。映画音楽的とすら言えるかもしれない。
ビル・フリーゼルもそうだが、この世代、特にユダヤ系のインテリ・ミュージシャンは、「(仮想の産物としての)古き良きアメリカの田舎」をテーマとした叙情的な作品を作らせると抜群に良い仕事をする(彼らが意図してそういうものを作っているのかは、実は良く分からないのだが)。彼らにしても結局は都会育ちだったりして、本当の意味でルーラル・ミュージックが体に染み込んでいるとは言えないはずなのだが、それでもなぜか非常に説得力があるのが不思議だ。それは彼らから「古き良きアメリカ」への距離が、私たち部外者からそういったものへの距離と、今となっては大して変わらないからかもしれない。
ユダヤ人にはルーラルの色が濃いクレツマーがあるから、体に染み込んでいないもののDNAが反応するんじゃないですかね、たぶん。
彼らはそんなに日常的にクレヅマー聞いて育ったんですかねえ。