2004-07-25
_ [Sun Ra] サン・ラー伝 / ジョン・F・スウェッド著 湯浅恵子訳
ついに出たようだ。実はまだ買っていません。でも間もなく買います。お前らも買え。(ちょっと高いのですが‥)
原著者John F. Szwedの本業はイェールの人類学の教授で、一方でジャズの研究書やマイルズの伝記なども書いている人だが、サン・ラー番長としてもごく一部ながら世界的に有名である。原著Space Is the Place: The Lives and Times of Sun Raは前に読んだが、とても内容のしっかりした良い本だった。今回翻訳がどうなっているのかまだ見ていないのでコメントは避けるが、湯浅学さんが監修しているようなのでたぶん大丈夫でしょう。サン・ラではなくちゃんとサン・ラーになっているあたりが見識というものである。
なお、この本を読んで実際のサン・ラーの音楽に興味をお持ちになった方は、去年私が四谷「いーぐる」でやった講演のときに何枚か推薦盤を挙げたので、よかったら参考にしてください。
また、サン・ラー伝を読み、推薦盤を聞き、いよいよ病膏肓に入った気の毒な方は、Robert L. Campbell & Chris TrentのThe Earthly Recordings of Sun Raを手に入れて読み進めるのがよろしい。Amazon.co.jpでは品切れのようだが、ディスクユニオンに行けばまだ在庫があるんじゃないかと思います。こっちは伝記ではなく基本的にはディスコグラフィなのだが、録音やパフォーマンスにまつわる話もツクダニにするほど載っているのでおもしろいです。
2007-07-25
_ [Music] From a Window / Wayne Horvitz
ジョン・ゾーンと組んでハードでキッチュなNaked Cityをやったり、自分の仕切りでソニー・クラークのトリビュートをやったり(結局ゾーンも入ってるのでみんなゾーンのリーダー作だと思っているけれど)、あるいはPigpenやZony Mashといったジャムバンド(?)を組んでごりごりオルガンを弾き倒してみたりと、キーボーディスト、ウェイン・ホーヴィッツも彼の世代のご多分に漏れずいろんなときにいろんなことをやってきた人だが、個人的にはこの作品のような、室内楽的に抑制された表現の中から熱気が遠赤外線のようにじんわり伝わって来るタイプのものが、変な衒いが抜けて素直にたのしめるようだ。肝移植を乗り越えて復活したベテラン・トロンボーン奏者のジュリアン・プリースターが中心のいわゆる「4+1」バンドに、バリトンサックスのスケーリックをゲストとして迎えた編成だが、この二人に加えてヴァイオリンのアイヴァン・カンの存在が良く効いている。曲そのものも良いし、シンセとアクースティック楽器の噛み合わせ方も見事。案外激しいところもあるのだが、全体としては心の落ち着く音楽である。映画音楽的とすら言えるかもしれない。
ビル・フリーゼルもそうだが、この世代、特にユダヤ系のインテリ・ミュージシャンは、「(仮想の産物としての)古き良きアメリカの田舎」をテーマとした叙情的な作品を作らせると抜群に良い仕事をする(彼らが意図してそういうものを作っているのかは、実は良く分からないのだが)。彼らにしても結局は都会育ちだったりして、本当の意味でルーラル・ミュージックが体に染み込んでいるとは言えないはずなのだが、それでもなぜか非常に説得力があるのが不思議だ。それは彼らから「古き良きアメリカ」への距離が、私たち部外者からそういったものへの距離と、今となっては大して変わらないからかもしれない。
_ 赤枕十庵 [ユダヤ人にはルーラルの色が濃いクレツマーがあるから、体に染み込んでいないもののDNAが反応するんじゃないですかね、た..]
_ mhatta [彼らはそんなに日常的にクレヅマー聞いて育ったんですかねえ。]