2015|08|
2007-06-08 [長年日記]
_ [Obit] お悔やみ状
最近知合いが亡くなることが多い。極東ブログのエントリ死者を悼むということを読んで、ふと以下の話を思い出した。山田風太郎の人間臨終図鑑 IIに載っている話だ。
「春の海」で有名な箏曲家の宮城道雄は1956年6月24日の深夜、夜行列車「銀河」から転落して不慮の死を遂げたのだが(悲しき記録)、翌朝宮城家に以下のようなお悔やみ状が届いた。
今朝先生お亡くなり遊ばした報道に接し、驚きの言葉さえ出ませんでした。
昨夜、銀河で御元気に御出発、お見送り申しあげたのにと一同御話申し上げて居ります。
誠に御痛わしい限りであります。
御生前中は私共色々と御厚情賜り感謝して居ります。右不敢取御悔み申し上げます。
六月二十五日
宮城様
東京駅赤帽一同
名文というようなものではないが、簡にして要を得ており、かつ十分気持ちが伝わる良い手紙だと思う。作家の中野重治はこれをみごとな悔やみ状だと嘆賞したと言うが、さもありなん。