2007-04-19 [長年日記]
_ [Sun Ra] Love in Outer Space / Myth Science
作曲家、メロディメイカーとしてのサン・ラーに日が当たることはあまり無いが、実のところ彼の書いたメロディの多くは作曲者当人やアーケストラの存在とは独立した世界を形成していて、他者による様々な解釈に耐えるだけの強度を備えている。カバーしやすく、かつカバーされても個性が失われにくいということです。だからもっと他の人がサン・ラーの曲を取り上げても良いと思うのだが、いかんせん知名度がエリントンやモンクやミンガスとは段違いなので、なかなかそうもいかないようだ。
このアルバムは1995年、筋金入りのサン・ラー・ファンであるベーシスト、ルーベン・ラディングが特別に組んだバンドを率いて「ニッティング・ファクトリー」で行ったライヴを録音したもので、サン・ラーの曲ばかりを演奏している。どれもうまく処理されているので、言われなければそもそもサン・ラーの曲だと気づかないだろう。サックス2本にオルガン、ベース、ドラムスというクインテットだが全員べらぼうにうまい。中でもアンソニー・コールマンのぶちきれたオルガンが強烈にかっこいい。1曲めや3曲めでのソロなどはかなりあり得ない。大音量で聞くとスカッとする。どうせオルガン弾くならこういう演奏がしたいものです。
サン・ラーのカバー云々という御託は脇に置いても、ここに込められた熱気は90年代の新録ジャズには例外的ではないかと思う。もう廃盤みたいだけど、おすすめ。