My Human Gets Me Blues

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2007-01-09 [長年日記]

_ [Reading] ミステリー&エンターテインメント700 / 河田陸村、藤井鞠子編

ミステリー&エンターテインメント700(河田 陸村/藤井 鞠子)

海外の推理小説やアクション、サスペンス、ファンタジー、ホラーといったいわゆるエンタテイメント系の本(の邦訳)は足が早く、評判になって数年後にはもう絶版、版元品切れということが多い。そんなときに便利なのがAmazonのユーズドだが、こちらはこちらで立ち読みで当たりを付けられないという致命的な欠点がある。実績のある人でもハズレはハズレだ。

私は多読乱読がモットーで、ハズレを引くのも楽しみのうちだとは思っているが、どうしたって可処分時間は限られているのだし、あまりハズレばかりは引きたくない。そんなわけで良質なガイドブックが必要なのだが、推理小説だけならコアな客が付いているせいかそれなりに良いものがあるものの、それ以外のエンタテインメント全般まで範囲を広げるとぱっとすぐに思い付くものが無い。私が個人的に好きなのは、そういった剰余のほうなのだけれど。

というわけで、海外のその手の本に関しては、このところずっとこれを使っている。採点の俎上に乗ったのは、選者11人による合議で選ばれた作家99人の、1995年までに訳が出た全作品ということなので、その年の新刊が対象のこのミステリーがすごい!2007年版などとは違って、基本的にはクラシックというか過去の名作が対象だ。また、ミステリ専業の作家は意図的に省いたらしい。結果として、キングやクーンツといったモダン・ホラー系やグリシャムのような法廷もの、フォーサイスやクランシーのようなサスペンスものといった王道エンタメ、トマス・ハリスやプーヅォ、レヴィンといった映画原作、ル・カレのような最近はほぼ絶滅してしまったスパイもの、はたまたブラウンやブラッドベリといったSF(?)や果てはウンベルト・エーコに至るまで、およそ娯楽読みものと名が付きそうなものは大体カバーしたごった煮となっている。裏を返せばSFなりホラーなりといった個々への突っ込みは、そうした個別ジャンルのハードコアなファンからすればごく薄くて物足りないのかもしれないが、私のようなあまり濃くないファンにとっては十分無名な人も多く取り上げられている。最近読んだ夢果つる街 (角川文庫)(トレヴェニアン/北村 太郎)なんて、知っている人は知っているんだろうけれど、ここで挙げられていなければ今さら手を出さなかったですねえ。

あと、個人的に気に入っているのは「やたら点が辛い」ということだ。★の数(1つから5つまで)で評価がついているのだが、★★★★★のさらに上、☆☆☆☆☆を取った「ぜひ読んでほしい超名作」は本当に数少ない。ちゃんと数えていないがおそらく数十もない。もちろん難癖をつけて強引に評価を落としている、というわけではなくて、ちゃんと読んだことがある人ならば、まあ言われてみればそうかな、と納得できるものばかりだ。例えば御多分に洩れず私もスティーブン・キングが好きだが、あのキングにしても☆☆☆☆☆は二作品にしか与えられていない。どれかはまあ、大体分かりますよね。ちなみにIT〈1〉 (文春文庫)(スティーヴン キング/Stephen King/小尾 芙佐)は★★★★★である。クーンツやグリシャムに至っては最高で★★★★★どまり。手厳しい…。

まあ問題は、このガイドブック自体がすでに絶版、ということですかね。良い本なんだけどなあ。