2007-01-07 [長年日記]
_ [Music] Classic / Chris Connor
白人女性ジャズ・ヴォーカルの大物、クール・ヴォイスのクリス・コナーというと、どうしても50年代にベツレヘム・レーベルに残した三枚、すなわちバードランドの子守唄(クリス・コナー)、ジス・イズ・クリス(ジョー・ピューマ/ミルト・ヒントン/ラルフ・シャロン/ハービー・マン/カイ・ウィンディング/J.J.ジョンソン/オシー・ジョンソン/クリス・コナー)、クリス(ラルフ・シャロン・グループ/エリス・ラーキンス・トリオ/サイ・オリヴァー楽団/ヴィニー・バーク・カルテット/クリス・コナー)のうちどれか、という話になってしまうが、現在に至るまで長いキャリアを誇るだけに、他にも良い作品は多くある。私がコナーが好きなのは情緒過多でもっさりしたところが少ないからなのだが、そういったさっぱりした美質は私が知る限りどの作品でも保たれているので、おそらくこの人の地なのだろう。
比較的最近(といっても20年前だけど)に録音されたこの作品は後藤雅洋さんのジャズ・オブ・パラダイス―不滅の名盤303 (講談社プラスアルファ文庫)(後藤 雅洋)で推薦されていたもので、へえと思って買ってみたらとてもよかった。大体において器楽奏者に比べヴォーカルは衰えるのが早いという先入観があったのだが、良い意味で裏切られて意外。
とは言っても声には年齢相応の疲れが見え、音域が下がっていることもあってかつてよりも若干重さが増しているような気もするが、周囲を固めているのがパキート・デリヴェラやクラウディオ・ロディティといった南国出身の明るい連中なので、軽やかなアレンジと相まって楽しく聞ける。Blame It on My Youthのようなかつてのストレートな定番も演っているが、Sweet Happy LifeやBrazilのようなブラジル系のちょっと意表を突く選曲はこのメンバならではだろう。個人的には、シメのLet's Take the Long Way Homeがちょっとをひとを食ったような粋なアレンジで気に入っている。