2006-12-02 [長年日記]
_ [Music] Nefertiti, the Beautiful One Has Come / Cecil Taylor
たまたまコメント欄でセシル・テイラーの話が出たので、何かセシルの作品を取り上げる気になった。
再発盤なのでタイトルこそ違うが、中身はいわゆる「Complete Live at the Cafe Montmartre」で、コペンハーゲン、カフェ・モンマルトルでのセッション(1962年11月23日録音)である。私が持っているのはその日本盤なので、このCD自体は持っていないのだが、故ジョン・フェイヒィが心血を注いだRevenantレーベルが出している(いた?)ものだし、音質面などには問題無いと思う。
セシルが叩き出すピアノの(即物的な意味での)音は、猛烈なスピードをキープしつつも一音一音に芯が通っていてとても好きなのだが、全体としての演奏があまりにロジカルかつメカニカルなので、しばらく聞いていると圧倒されるばかりか息苦しさを感じてくる。70年代以降に多いソロ・ピアノの諸作はもちろん好きで、Silent Tongues(Cecil Taylor)あたりは気合を入れるために日常的にかけているのだが、やはりソロだとセシルの特質がこれでもかとばかりに遺憾なく発揮されるので、気疲れの度合も高まるのは否めない。
そこに行くとこのセッションは、テイラー自身のテクニックや方法論は完成の域に達しているが、なんといってもまだ若いし、書く曲もLenaあたりは依然としてコード感のようなものが残っている。そもそもWhat's Newとかスタンダードも演っているし(まあ、あれがWhat's Newだと気づいた瞬間に腰が抜けると思うが)、共演のジミー・ライオンズが吹くのはパーカー・フレーズだらけだし、全体的に若干手探り感というか、固まっていない部分が残っていると思う。それが音楽的には決してマイナスになっておらず、むしろ聞き手にとっては不要な緊張感が緩和されて好ましいものになっているあたり、昇り調子の勢いというやつなんですかねえ。テイラー入門としてもおすすめ。