2006-11-11 [長年日記]
_ [Music] Camp Song / Ben Perowsky
以前(もしかすると今でも)、某ディスクユニオンに行くと必ずこのCDが投げ売りされていた。よほど売れなかったのだろう。私も確か吉祥寺のユニオンで500円か何かで買った。安かった。貧乏くさいガキどもが居並ぶ魅力に乏しいジャケで、なんだか相手から「買うな」と言われているような。
ジョン・ゾーンのTZADIKレーベルから出た「ラディカル・ジューイッシュ・カルチャー」シリーズの一枚なので、ユダヤ音楽を現代の耳で再解釈しましょう、というのがお題目である。ベン・ペロウスキはジョンスコやデイヴ・ダグラスと共演歴のあるドラマーで、一応彼のリーダー作ということになっているが、何も言われなければピアノのユリ・ケインがリーダーのようにも聞こえる。ベースのドリュー・グレスも含め、三人ともとにかくべらぼうに楽器がうまい。
ユダヤの子供たちがサマーキャンプで歌う、ユダヤの伝統的なメロディを様々な形で料理しているのだが、あえてそう意識しなければ、ものすごくよくできた現代的なピアノ・トリオものとして普通に聞ける。5曲めの疾走感などただごとではない。あの手この手でひねってはいるのだが、無理にいじりまわしているという感じを少しも与えないアレンジの冴えも凄い。日本人ピアニストが日本の民謡を取り上げて、これだけシャープで切れのある聴後感を日本人に与えられるかを思えば、その困難さは明らかだろう。と言っても、当のユダヤ人がこれを聞いてどう思うかは私には分からないのだが。