2004-09-02 [長年日記]
_ [Music] Windy City Boogie / J.T. Brown
エルモア・ジェイムズやJ.B.レノアといったシカゴの実力者のバックで、とにかく気合のこもった(というか気合しかない)サックスを吹いていたのがこのJ.T. ブラウンだ。ジャズやジャイヴ方面から流れて来た人ではなく、生粋のブルーズ・スペシャリスト(というと聞こえはいいがようするにブルーズしか吹けない)なのであまり日本では注目されないようだが、立派なホンカーの一人である。
私はサックス吹けないのであまりよく分からないが、この人は楽器の扱い、演奏技術という意味でのテクニックはあまり無かったのではないかと思う。豪快と言えば豪快だが、音色もフレージングも単調だし、良く聞くとそれほど楽器を鳴らし切っているわけではない。独特の音色と言えば聞こえはいいが、不安定な音程に加え妙なところで妙なビブラートがかかる吹奏は、「The Nanny Goat Horn」と揶揄されることもあったようだ。雌ヤギのメェーメェーという鳴き声に聞こえるというわけだが、実際そう聞こえるので仕方がない。歌も歌うが、だからなんだという程度のものである。ようするに、西洋音楽的な洗練というようなものからは全く遠い人なのだが、しかしこの人ならではという個性というか、「味」がある。
このCDには、J.T.が1950年代初頭の絶頂期に遺したリーダー録音の大半が集められていて、サイドマンもブルーズで煮染めたようなメンツが揃っている。レパートリーも、大同小異のブルーズがひたすら続く。まるで金太郎飴のようだが、そこがいいのだ。白眉はやはりタイトル曲か。
どうでもいいが、パーソネルに「Roosevelt Sykes, encouragement & zest」と書いてあって、いったいルーズベルト・サイクスは何をやっているんだろうと思ったら、本当にバックで合の手を入れて「激励」(歌っているわけではない)しているのだった。何の意味があるんだ‥。