2015|08|
2004-07-06 [長年日記]
_ [Reading] 人間臨終図巻 / 山田風太郎
尾篭な話で恐縮だが、自宅にいて便所に行きたいというとき持っていく本がいくつかあって、その一つがこれである。さっきも持っていった。私が持っているのはソフトカバーの中判本だが、全巻文庫になっているようなので今回はそちらにリンクを張ってある。
中身はというと歴史上の有名人の「死に様」を死亡時の年齢順に列挙した事典風の読みものなのだが、取り上げられているのは今でも有名な人が主とは言え、もはや忘れられた人も多く、人選には筆者の好みが強く反映されていると思う。単に死の瞬間だけではなく、そこに至る過程(場合によっては当人の全人生)をも過不足無く書き込んでいるあたりが、山田風太郎の真骨頂と言えよう。
当初は一項目が短いから区切りの良いところまですぐ読めるというだけの理由で「便所本」になったのだが、すでに何十回も通して読んでいるのに相変わらず面白い。第一巻から第三巻まであって、どれも面白いのだが、中でも抜群なのは73歳以上で死んだ人の死にっぷりを描いた第三巻で、これはたまらない。これを読んでいると、そもそも人間は死ぬにも値しないのではないかとすら思えて来る。歳を取るのも楽ではない。