2010-05-31 [長年日記]
_ [Jazz] Blues Dream / Bill Frisell
このところ忙しくて完全にサボっていたcom-postのクロスレビューだが、久しぶりに参加した。他の同人の皆さんには大変なご迷惑をおかけして面目ない限りである。スイングジャーナルも無くなってしまったことだし、今後はcom-postでの新譜レビューにも力を入れていきたい。
さて、今月のお題はご覧の通りブラッド・メルドーの新譜「Highway Rider」だったのだが、お聞きになった方、いかがでしたかね。私はというと、レビューでも書いた通り、悪くはないんだけど(むしろ部分的には結構良いんだけど)、しかしメルドーってこんな「まとも」な奴だったっけ、というようなある種の困惑を感じた。大きなお世話といわれればそれまでですが…。変なところで引き合いに出して悪いが、パット・メセニーのある種の作品にも感じられる妙な「精神の健康さ」みたいなものが伝わってきて、正直に白状すれば私は苦手である。ただ、それは結局のところ好みの問題かとも思う。音楽的なレベルはとても高い。
ところで、メルドーのレビューを書きながらなんとなく対照項として思い浮かべていたのが、ビル・フリゼールのこの作品だった。ジャケットのデザインも(とりあえずアメリカの田舎のロードサイドという点では)似ているし、音楽のスタイルも大きなくくりで言えばまあ似ているし、そもそもフリゼールの頭の中に浮かんでいた情景自体は、メルドーのそれと大差無かったのではないか。だから違いは語り口にあって、ようするにフリゼールは音楽で情景を描写しようとしているのに対し、メルドーは音楽でストーリーを描写しているのではないかと思う。まあこれは好みの問題だけれど、私はストーリーは文章で描写したほうが良いと思っているので、どちらかと言えばフリゼールのやり口のほうに親近感がある。明確なストーリーが存在しないかわり、そこはリスナーの想像力に完全に任されているというわけだ。
まあそんな御託はともかく、この作品は(例によって地味だが)フリゼールの知られざる傑作だと思う。
確かに「情景描写」と「ストーリー描写」は違うよね。私も「ストーリー描写」は苦手です。ところで、フリゼールのこのアルバム、私の愛聴盤ですよ。