2009-10-04 [長年日記]
_ [Obit] 「お酒が悪い、本当にお酒が悪い」
中川昭一氏が亡くなったそうだ。直接の死因はまだ判明していないようだが、肉体的のみならず、社会的にも酒に殺されたようなものというのは確かだと思う。気の毒なことである。冥福をお祈りする。
昔、ある官庁でしばらくインターンをやっていたことがあるのだが、中川の「酒豪」ぶりは、すでにそのころから一部官僚の間で噂となっていた。当時は小渕内閣の農相だったと思うが、大臣執務室で昼から酒を飲んでいるともっぱらの評判だったものである。
それを聞いたときはなんとまあだらしないオッサンかと呆れただけだったが、後で冷静に考えてみれば、陣笠議員ならともかく仮にも一国の大臣が仕事中に酒を飲むというのは、相当常軌を逸した行動である。後年、自身も重度のアル中でホームレスにまでなった吾妻ひでおの傑作「失踪日記」を読み、中川は酒好きとかいう軽い次元を越えた、明らかに専門的加療を要する「病気」だったのだなと得心が行った。
吾妻は言う、アルコール依存症の患者に対する唯一の治療は完全な断酒「のみ」である。アル中に節酒はあり得ない。一滴も飲まないか、一滴飲んで壊れるか、どちらかだ、と。先の選挙戦の際には断酒宣言をしたそうだが、行政解剖の結果アルコールが検出されたという話もあるし、おそらくは最期まで、酒を完全に断つことはついに出来なかったのだろう。依存は、個人の意志でどうにかなるほど生やさしいものではないようだし、吾妻のように家族が腕ずくででも断酒クリニックに入院させるというようなことは、出来なかったものか。
それにしても、麻生も漫画好きと言うなら、せめて中川に「失踪日記」でも紹介してやればよかったのに。
ちょっと前にここで紹介されていた「ニッポンの思想/佐々木敦」ですが、あの本私も読みましたが最後の方に八田さんの名前が出てましたよね。