2009-01-02 [長年日記]
_ [Jazz] Roll Call / Hank Mobley
昨年末、フレディ・ハバードが亡くなったそうだ(All About Jazzの記事)。享年70歳というからまあ長生きのほうだろうが、生物学的にはともかくトランペッターとしての寿命はとうの昔に尽きていたとおぼしい。私はかなり晩年の作品まで付き合ったほうだと思うが、率直に言って1991年録音のLive at Fat Tuesday(Freddie Hubbard)あたりからは「吹けていない」という形容がぴったりだった。急速な衰えは唇の病気のせいと聞くが、他の理由も耳にしたことがあってよく分からない。
それでも私は、ジャズ史上最も優れたトランペッターはハバードだったのではないかと思っている。音楽家としての幅はマイルスに一歩譲るかもしれないが、トランペットを、あの楽器ならではの輝かしい音で、あそこまで吹き抜いた人は他にはいない。
ハバードは優れた作曲家、アレンジャーでもあり、おそらく今後はそうした面がクローズアップされることが多くなるだろうから(何せ書いたオリジナル曲のほとんどが今やスタンダードと化しているのだ)、そうした面の強く出た作品を推そうかとも思ったのだが、ここは個人的な好みに殉じて、サイドマンながらあまりの素晴らしさに主役を完全に食ってしまったこれを挙げてみることにした。リーダーのモブレーもいつになくがんばってはいるのだが、このアルバムは事実上ハバードとアート・ブレイキーの双頭リーダー作のようなもので、おいしいところは全部この二人(とウィントン・ケリー)が持って行っている。ぎゅっと中身の詰まったハバードならではの炸裂する音色が聞きたければ、まずはこれだ。