2008-02-12 [長年日記]
_ [Music] At Monterey 1958 / Billie Holiday
もう久しく更新していないが、かつて私は自分が持っているCDのリストを作ってネットで公開していたことがある。それを見て、日本に限らず世界各地のコレクターが、あれをくれだのこれの情報を教えろだのとしょっちゅうメールで問い合わせてきたものだ(私は基本的にトレードはしませんが)。このアルバムは1958年10月5日、モンタレー・ジャズ・フェスでのライヴ音源だが、ここ十数年ほど非常に手に入りにくかったので、今まで何度もそういったメールをもらったことがある。それだけ熱心に探していた人が多いのだろう。今年に入ってようやく再発されたようだ。
ビリー・ホリデイはこの翌年、1959年7月に精魂尽き果てたという感じで亡くなってしまうので、これは最晩年の録音の一つということになる。声の荒れで悪名高いレディ・イン・サテン+4(ビリー・ホリデイ)(1958年2月録音)よりもさらに後の録音だけに、さぞとんでもない出来だろうと思いきや、観客のリクエストにも気軽に応じてチャーミングに歌うホリデイがここにはいる。確かに声そのもののツヤはかつてとは比べるべくもないが、マル・ウォルドロンを中心としたトリオを従え、大物ゲストを迎えて気分良く定番曲を歌いまくるホリデイに死の影のようなものは全く感じられない。モンタレーの会場は近所に空港があるそうで、途中で派手な飛行機の爆音が入っていたりもするのだが(ただし隠し撮り等ではないので音質そのものは特に問題無い)、ここは録音から20年以上も行方不明だったというマスターテープの発見を素直に喜ばなければなるまい。というのも、この直後に赴いた最後のヨーロッパ・ツアーは観客からの野次でステージを放棄せざるを得なくなるほどの惨めな有様だったそうなので、おそらくこれが伝説的な歌姫の最後の輝きだったはずだからである。
事実上の音楽監督を務めていたのだろうウォルドロンが随所で見せる頑張りもなかなかだが(Lover Come Back To Meのアレンジとピアノのカッコよさ!)、ゲスト陣では、ジェリー・マリガンの繊細な歌伴(特にI Only Have Eyes For Youでの素晴らしいオブリガート)が印象に残る。悪いこた言わないので買える間に買っとけ。