2006-11-08 [長年日記]
_ [Music] The Real Birth Of The Cool / Gil Evans
1940年代のクロード・ソーンヒル・オーケストラの録音のうち、ギル・エヴァンスがアレンジを提供したのを中心に集大成したもの(1枚はスタジオ録音、もう1枚はラジオ放送用のトランスクリプション)。1950年代、若干落ち目になった後のソーンヒル楽団の様子はさよならバードランド―あるジャズ・ミュージシャンの回想 (新潮文庫)(ビル クロウ/Bill Crow/村上 春樹)に生き生きと綴られているが、この頃はソロイストとしてリー・コニッツやレッド・ロドニーら腕利きを揃えコーラス・グループまで擁していた絶頂期であり、ギルのスコアを最大限に生かした華麗な演奏を聞かせる。ソロイストに不要な枷を嵌めず、それでいてフレンチホルンまで加えたオーケストラならではの色彩の厚みを加えていくアレンジの冴えは、さすがモンクに「今まで聞いた中では唯一ほんとに良いビッグバンドだね」と言わせただけのことはある。チャイコフスキーのようなクラシック曲とビバップ曲をアレンジ対象として全く等距離に扱っているあたりもすごい。クールはマイルズの専売特許じゃないぞ、というタイトルの付け方も挑戦的だ(これは大昔に出た日本編集盤を踏襲したようですね)。なお、前掲書の訳者でもある村上春樹は、このあたりの録音をカセットに入れて仕事用のBGMにしていたらしい。私も最近そうです。