2003-11-23 昨日は事実、今日は存在、明日は希望 [長年日記]
_ [Sun Ra] Cosmo Sun Connection / Sun Ra and the Arkestra
常に古代エジプトと土星と宇宙と未来への希望を語りつづけた(というのは結局のところ現世への絶望の裏返しだと私は思う)サン・ラーだが、実人生ではものの見事なまでにその日暮らしであって、その一証拠がこれだ。現在ではロック/アヴァンギャルド界の重鎮となったクリス・カトラー率いるイギリスのRecommendedレーベルは、80年代にSaturnの旧作音源をヨーロッパで活発にディストリビュートしていたが、そこにLPとして引き渡す約束で金を前払いしてもらったのに、結局LPをプレスする費用がなくなってマスターテープごと渡した、というのがこの音源である。1984年のいつかにおそらくアメリカでライヴ録音された、ということ以外詳細不明。
一曲目は定番だが、ここでのバージョンはなんとも悦楽度が高いというか、はっきり言って不健康なまでに多幸感に満ちた演奏である。もともとそういう曲想なのだが、特にこれはやばい。後半、わけのわからないコーラスとサン・ラーのスペイシーな(としか形容しようがない)シンセが絡んでくると事態はほとんど新興宗教の水域に達する。
あとの曲はまあ、この時期ありがちなアーケストラのライヴ定食であって、特筆するほどのものでもないが、サン・ラーのピアノをフィーチュアしたブルーズあり、例によって騒音発生に命をかけるマーシャル・アレンのアルトあり、シンセおたくとしてのサン・ラーが味わえるノイジーなトラックあり、しかもそれでいて全部で30分ちょいで終わってしまうという潔さといい、実に素晴らしい。誉めてるんだかけなしてるんだか分からないでしょうが比較的誉めています。
なお、このCDの売上はRecommended(今はReRの方が通りが良さそうだ)に行かず、直接アーケストラに入るそうなので、まあお布施だと思って買うのが功徳というものでしょう。南無。