2006-10-02
_ [Music] Drifting / Walter Norris
去る9月28日、ハンガリーのベーシスト、アラダール・ペゲが亡くなったそうだ。66歳。「ベースのパガニーニ」なる異名を取ったテクニシャンで、ジャズのみならずクラシックの世界でも活躍した。世界的にはニューヨーク・タイムズに死亡記事が出るくらいの有名人なのだが、日本での知名度は皆無に近いと思う。
個人的には前掲の記事中にもあるアメリカ人ピアニスト、ウォルター・ノリスとのデュオが一番気に入っていて、音量を上げてもあまりうるさくないのでナイトキャップ・ミュージックとして寝る前に良くかけている。この作品では前半3分の2をやはりヨーロッパ出身のベースの名手ジョージ・ムラーツが弾き、最後の3曲だけペゲ(しかもライヴ)が弾いているのだが、音楽的なアプローチこそだいぶ違うものの、どちらもノリスの流麗で整ったピアノとは相性がぴったりだ。いくつかの曲は嫌味にならない程度にエキゾチックな曲調/アレンジで、これも加点対象。おすすめ。
2007-10-02
_ [Music] Piano Man / Hilton Ruiz
去年、そんな歳でもなかったのに酔っ払って倒れたら打ちどころが悪くて死んでしまったヒルトン・ルイスのデビュー作。久々に日本盤が出たようなので紹介する気になった。
このアルバムに関しては個人的な思い出がある。大昔、ニューヨーク州、と言っても北のほうのとんでもない片田舎に住んでいたのだが、身辺が落ち着いたころに電車でニューヨーク・シティに行く機会があった。そのころから若干頭がおかしかったもので、自由の女神に登るとかメン・イン・ブラックの本拠地を訪ねるとかそういう真っ当な観光はせず、とりあえずタイムズ・スクエアのヴァージン・メガストアに飛び込んでCDを物色したのである。そして何枚かCDを買ったのだが、その中にこのアルバムがあった。なぜ買ったのかはよく覚えていないが、やはりジャケの麦わら帽子男にインパクトがありましたかね。以来、日本に帰ってきてからも折に触れてよく聞いている。
バスター・ウィリアムズにビリー・ヒギンズというベテラン2人で脇を固めた、新人のリーダーデビューとしては申し分の無い一枚で(まあ新人とは言ってもすでにジャッキー・マクリーンやローランド・カークらのサイドマンを務めた経験はあったが)、よく聞けば結構荒っぽい演奏ではあるのだが、そこはナチュラルなリズム感と勢いの良さで押し切って聞く者を飽きさせない。選曲もラテンのバックグラウンドを活かした魅力的なオリジナルに加え、コルトレーンの難曲を取り上げてみたり、こってりとしたブルーズを10分耐え抜いたり、なかなかの頑張りを見せている。
若くして才を見出された人、特にピアニストのデビュー作は、往々にして独特の爽やかで青い空気感を漂わせることが多いように思うのだが(例えばミシェル・ペトルチアーニの「赤ペト」)、この作品も例外ではないように思う。完成度とか、音楽的な厚みとか、そういったものさしで測ればまあ、いろいろけちもつけられるのでしょうが、これはこれでなかなかいいものです。
_ 後藤雅洋 [偶然ですね。かなり「マイナー」なアルバムですが、私も愛聴しています。というか、「いーぐる」の低音チェックには、これを..]
_ mhatta [そうなんですか。エンヤのピアノものははずれがないのと、あとピアノものに限らずエンヤのCDは流通が悪くて見付けたときに..]