2003-09-14 あついよう
_ [Music] Unissued (poss. Sep. 1962 in Oslo) / Bud Powell
ディスコグラフィの編纂をやっていると思わぬ余徳があるもので、とある方からBud Powellの未発表音源を頂戴する。1962年9月、オスロでの録音ということで、元はFrancis Paudras由来のブツだそうだ。全部で30分弱だし、それほど音質も良くないので今後も(少なくとも単体で)発表されることはないだろう。
データに関してはに追記しておいたのでそちらを参照していただけばよいが、音響から判断するに放送録音ではないし、観客のしゃべり声等も聞こえないのでどうやらライヴではなくリハーサルの模様を記録したもののようだ。
ただ、私が知る限りでは1962年の9月は3週間に渡ってストックホルムの「ゴールデン・サークル」(Gyllene Cirkeln)に出演していたはずなので、その前後にオスロまで足を伸ばしたのかどうか、よくわからない。あるいは、ストックホルムに滞在中は毎日ホテルで2時間リハーサルをやっていたとのことなので、その時Paudrasが録音していたということなのかも。
1962年のPowellは全般的にかなり調子を戻していて、日によっては絶頂期を彷彿とさせる猛烈な演奏を残しているのだが、ここではまあ中くらいの出来。レパートリが変わり映えしないとは言え悪くない演奏を展開している。ベースとのデュオでのI Remember Cliffordはかなり泣ける。At the Golden Circle Vol.3のバージョン越えてるかも。
2004-09-14
_ [Music] 結婚式・披露宴のBGM
友人から「ロマンチックなBGM」を選べという指令が来たのだが、ロマンチックな曲というのは当方のもっとも苦手とするところであって、どうしたものか途方に暮れる。
この日記の参照元などを見ると、結構「披露宴 BGM」とかで検索してくる人がいるようで、ああみんな苦労しているんだなと思いました。
_ [Music] The Loop & New And Groovy / Johnny Lytle
ロマンチックな曲を探すはずが、なぜかこんなものを聴いている。
むかしむかし、「渋谷系」の音楽というのが大変流行ったと噂に聞くが、私は渋谷系全盛期(90年代初頭)をリアルタイムで経験するにはちと若すぎたので、その実態はよく知るところではない。
で、このアルバムはその渋谷系の聖典の一つだったそうだが、本当にそうだったのかどうかも定かではない。とはいえ、今や劇団ひとりならぬひとりオリジナルラヴとなってしまった田島貴男が1991年のシングルMillion Secrets Of Jazzでメロディーをそのまま拝借していたのは、このアルバム(2LP in 1CDです)の後半New And Groovyに収録されたSelimという曲からだったりするので、それなりに知名度はあったのではないかと思われる。オリジナル盤はTubaというデトロイトのレーベルから、The Loopが1965年、New And Groovyが1966年に出たのだが、ここはリヴァーサイド・レーベルが潰れて失業したオリン・キープニューズが、マイルストーン・レーベルに行く前にプロデューサとなってジュニア・マンスのアルバムか何かを出していたところである。物凄くローカルでマイナーでレアなところだったはずなので、よくこんなものを見付けだしてきたなあという感じですね。今はCDで簡単に手に入ります。
中身はというと、どの曲も耳に残るキャッチーなメロディにほどよいアレンジが施されていて、聴いて楽しい悦楽度満点の一枚である。ジョニー・ライトルはライオネル・ハンプトン流にひたすら叩きまくるタイプのヴァイヴ奏者だが、この作品ではマリンバも併用していてこれが良いアクセントとなっている。捨て曲が全く無いあたりも素晴らしい。全体的に清涼感と気怠さに満ちていて(ちゃっちぃ音色のオルガンがまたそそる)、亜熱帯の午後というか、いかにも良い湯加減なのだ。個人的には前半The Loop相当分のほうが音楽の彫りが深いような気がするが、後半も冒頭を飾る退廃的なThe Snapperがよいし、なんといってもキラー・チューンのSelimが入っている。
さて、上記のような書き方をするとジャズ原理主義者はすでに聞く気も関心も失っているのではないかと思うが、CDにはどこにも書いていないとはいえ、一貫してピアノを弾いているのは実は晩年のウィントン・ケリーである。何度も出てくるMillion Secrets Of Jazzの元ネタSelimで、超かっこいいソロを取っているのも彼です。ちょうどHalf Note Cafeでウェス・モンゴメリーとライヴ盤を作った直後の録音にあたるが、深酒のせいで急速に運指が衰える直前の、人生最後の照り返しといった感じ、マイルズ・バンドをクビになった後ではベストといっても良いプレイを披露している。すでにポール・チェンバースは結核で体調を崩してレギュラーから抜けており、ベースは両方とも違う人なのだが、後半のドラムスはジミー・コブだったりもする。そしてもちろん、Selimはあの人の名前を逆に綴っただけですね。まあ、曲自体がMilestonesのパクりなのだが。