2012-01-10
_ [Jazz] Bottom Groove / Wild Bill Moore
マーヴィン・ゲイの有名なWhat's Going Onでは、数カ所でサックスが印象的なソロをとるのだが、あれを吹いていたのがこのワイルド・ビル・ムーアである。テキサス出身だがデビューはシカゴ、その後ロサンジェルスで一旗揚げて、後年はデトロイトを拠点にモータウンのバックでも活躍と、サックス一本サラシに巻いた流れ鳥ホンカーだが、晩年はまた西海岸に戻り、事故で顔が滅茶滅茶になったあとのパーシー・メイフィールドのライヴ盤とか、やはり晩年を迎えていたビッグ・ジョー・ターナーの傑作Things That I Used To Doにも参加していた。豪放と言うよりは単に荒い/粗い感じの吹きっぷりなのだが、音をちぎって投げつけるようなパワフルさに加えて妙に器用なところもあり、独特の魅力がある。そういえば、彼がかつて録音した"We're gonna Rock, We're gonna Roll"という曲名が「ロックンロール」という言葉の直接の語源という説もあるそうです。
これはムーアが60年代に残した2枚のリーダー作LPをCD1枚にまとめたもので、前半の「Wild Bill's Beat」相当分はジュニア・マンスのピアノ、後半の「Bottom Groove」相当分はジョニー・ハモンド・スミスのオルガンが付き合っている。個人的にはムーアの若い頃のヒット曲「Bubbles」の再演に加えてマンスの素晴らしいブルーズ・ピアノも聞ける前半のほうが好きだが、後半もムーア本人は悪い出来ではない。ただ、ハモンド・スミスのピラピラした音色がねえ…。