2003-08-26 隠遁中
_ [Music] Swedish Pastry / Bud Powell
SteepleChaseにはmid-priceというシリーズがあって、もともと単品で出ていた同一セッションものが二枚組にまとめられて心持ちお安く手に入るのだが、このSwedish Pastry / Bud Powellも元はAt the Golden Circle Vol.1 / Bud PowellとAt the Golden Circle Vol.2 / Bud Powellとして分売されていたもの。現在でも一応分売されているのだが、以下のような理由からこの二枚組を買ったほうが良いと思う。
- 単品のVol.1に入っている「Reets and I」は1分少々の短いバージョンだが、Swedish Pastryには9分弱のフルバージョンが入っている。しかも、この曲はなかなか出来が良い。
- ジャケには記載されているのに「Hackensack」が収録されていないVol.1がある(少なくとも、以前私が持っていたのはそうだった)。当然Vol.2にも入っていない。おまけに、この曲でもパウエルは結構快調に飛ばしている。
ちなみに1分ちょいのは公式の録音で、マイクトラブルのために途中で録音を止めてしまったらしいのだが、どうやら後に発見されたJan Forsbyの(無断録音)テープにも同じときの演奏が入っていて、Swedish Pastryにはそっちが収録されているということのようだ(そういった事情はどこにも書いていないので推測の域を出ないのだが)。音質的な違和感がほとんどないのはありがたい。ちなみにForsbyのテープの残りは三枚組のBudism / Bud Powellとして日の目を見たが、SteepleChase設立20執念周年を祝う限定盤というふれこみだったのに、今でも案外簡単に手に入るようである。
内容はといえば、レパートリーも演奏的にも典型的な晩年のパウエルで、ベースとドラムが今ひとつぱっとしないと言うこともあってかったるい部分も多々あるのだが、そういうところには目をつぶって良いところだけ聞きましょう。1962年のパウエルは意外とはずれがない。少なくとも今日のBGMとしてはなかなかよかった。
_ [English] astroturfer
astroturfer()という言葉とは何ぞやという話が出て、いろいろ辞書を引いたのだがまったく出てこない。用例(しかもLinux関係ばかり)から幾分負の意味合いがあるらしいことはわかるのだが、どうも要領を得ない。おまけにjargon fileにも載っていない。困ってネイティヴに聞いたところ、「fake grass-roots movements」との答えを得た。うまい訳語を思い付かないが、サクラとかヤラセとか、そのあたりかしら。
どうも、Astroturfという有名なブランドの人工芝があって、草の根(grass-roots)のにせもの==アストロターフの人工芝ということらしい。ううむ、そんなん知るかよ。
ふと思い立ってを引いて見たが、
Astroturf lobbying: 有権者が手紙や電子メールなどを大量に政治家に送りつけることというのが出てきた。なるほど。
2004-08-26
_ [Music] 真夏の夜のジャズ
どうも寝つけないので、他人様の日記をぼちぼち読んでいたのだが(原稿書けよ)、たまたま仲俣暁生さんがご自分の日記でこの映画を取り上げているのを見掛けたので、思わず昔録ったビデオを引っ張り出して最初から見てしまった。
すでに何回となく見ているのだが、何度見ても良いものは良い。個人的には、「颯爽」と言う形容がいかにもぴったり来るアニタ・オデイのステージ(女の子は万難を排して見なさい)や、白いスーツをびしっと着こなしいかにも満を持してという感じでビッグ・メイベルの背後から勇姿を現すバック・クレイトン、ジョー・ジョーンズやピーナッツ・ハッコーら百戦錬磨のじじいどもに囲まれてジャズ風味のロックンロールをやる羽目になっている若いチャック・ベリーなどのシーンが印象に残る。もちろんモンクやマリガンや、ちらっと出てくるドルフィーも良いのだけれど。
とはいえ、今回とにかくしびれたのはトリのひとつ前で登場するルイ・アームストロングのステージで、見ていたらどういうわけか震えが来て動けなくなってしまった。VOAのアナウンサーだったウィリス・コノーバーとおそろしく下らない話で盛り上がっているシーンから急転、十八番のLazy Riverが始まるのだが、白いハンカチ片手に淡々と吹き、陽気に歌うだけなのに、なんとも言えぬ「深み」があるのだ。というより、もっと言うとある種の「凶々しさ」すら感じたのである。すでに年齢的には下り坂にあったはずのサッチモの最後の凄味とでも言うべきか。何度も見たシーンなのにこんな気分になったのは初めてで、不思議なものだ。
なお、村上春樹がこの映画の内幕話について触れていたのは、たぶん彼が翻訳したビル・クロウのさよならバードランドの中でだろうと思います。他の本でも似たようなことを書いているのかもしれないが。
Before...
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