2015|08|
2007-07-16
_ [Reading] ナショナリズム - 名著でたどる日本思想入門 / 浅羽通明
「ナショナリズム」というのはなかなか捉えどころのない概念だ。それはおそらく、ナショナリズムがネイション、すなわち「国」へのいわば愛として定義されるにもかかわらず、肝心の「国」が具体的に想起するイメージが人によってまちまちで、おまけにそれらを愛する理由は突き詰めれば(少なくとも個人の観点からは)合理的に説明できるものではなく、しかしそれでもなお「国」は「我々の意識を深いところで規定してくるリアリティとして現に在る」(pp.21)ためなのだろう。ナショナリズムが大上段の「思想」というよりはむしろ生理に近いものであり、、小説や漫画、歌といったメディアからも身体に染み込んでいくという事実が、さらに事態を複雑にする。
というような出だしから、三宅雪嶺から本宮ひろ志まで縦横無尽、相変わらずの浅羽節でリズム良くまとめられている。ベーシックなものからマニアックなものまで幅広くカバーした読書案内の「読書ノート」が各章に付けられているのも便利。