2006-11-19 [長年日記]
_ [Music] Un Poco Loco / Bobby Hutcherson
ジャイヴの帝王に「Saturday Night Fish」ナントカという名曲があるのだが、私はずいぶん長いことSaturday Night Fish Flyだと思っていた。ところが最近歌詞をちゃんと読む機会があって、実はあの曲はFry、魚の揚げ物(を食べるパーティ)についての歌だったことに気がついたのである。聞き流していると絶対に気がつかないのですね、こういうのは。
でも、「土曜の夜に魚飛ぶ」というのは、自分で言うのもなんだが、なかなか想像力を刺激するフレーズではなかろうか。fishという単語は単複同形だったりもするし。そういえばほんとに魚が空を飛んでいる変なジャケがあったな…と思って思い出したのがこれ。
まあ、そもそもイルカは魚じゃねえだろうとか言われると言葉もないのだが、このアルバムはへんてこなジャケに負けず中身も面白い。ヴァイヴ奏者、ボビー・ハッチャーソンが1980年に録音した作品だが、フュージョンはもう先が見えてきたけどウィントン・マルサリスはまだ出てきてない、というような端境期に生まれた、いかにも端境期らしい折衷的な作品だ。ジョン・アバークロンビーがギター、ピーター・アースキンがドラムスで、かつジョージ・ケイブルズがエレピを弾いたりするので、全体的にはフュージョンっぽさの漂う軽めのジャズという雰囲気なのだが、ハッチャーソンのソロには例によって手抜きがないし、取り上げているのが実はパウエルの「ウン・ポコ・ロコ」を筆頭に案外骨のある曲だったりして、メンツもちょっと変、曲目もちょっと変、ジャケはかなり変、という面白いものに仕上っている。そもそもタイトルの「ウン・ポコ・ロコ」というのは、ラテン語で「ちょっと変」という意味なんですと。割と気に入っていて良く聞きます。
八田さん、かなりマニアックなもの聴いてますねえ。実を言うとこれは私も好きで、初めて書いた単行本『ジャズ・オブ・パラダイス』でも、他を差し置いてハッチャーソンの推薦盤に入れちゃったぐらいです。ジャケットからは想像しにくい「隠れ名盤」ですよ。
マニアックも何も、後藤さんのご本を読んで知って買ったんですよ(笑)。数年前にKoch JazzからCD化されたときに買ったんですが、足が速いようで、もう廃盤みたいです。
そうだったのですか、ありがたいことです。僕らジャズ喫茶オヤジは、自分が推薦したアルバムを喜んでもらうのが、一番の張り合いなのです。