2006-07-27 [長年日記]
_ [Music] In Philadelphia 1960 With Steve Lacy / Thelonious Monk
ブラウニーとドルフィーの共演(TOGETHER RECORDED LIVE AT DOLPHY'S(CLIFFORD BROWN/ERIC DOLPHY))など、怪しさ100%な発掘音源をこのところ怒濤の勢いでCD化しているRare Live Recordings (RLR)が、またヘンなものを繰り出してきた。今回は、ありそうで実はなかったセロニアス・モンクとスティーヴ・レイシーの本格的な共演記録。
実はこのCD、年代もメンツも異なる5つのセッションの寄せ集めなので、レイシーが入っているのは冒頭に収録された1960年フィラデルフィアでの放送録音、時間にして20分弱だけ。正直タイトルにするほどの分量じゃないだろうと文句も付けたくなるがそこはそれ、他の4つもなかなか興味深いものばかりなので、個人的には別に構わんです。
モンクとレイシーの共演というとBig Band and Quartet in Concert(Thelonious Monk)があるにはあるのだが、ここでのレイシーはあくまでもビッグバンドの一員という位置づけなので、ソロも無ければモンクとの絡みも一切ない。一方、今回初めて日の目を見たこの録音では、ソプラノのレイシーとチャーリー・ラウズ(ts)という二管編成(考えてみたらこれもずいぶん不思議な組み合わせやね)なので、ちゃんとソロも取る。晩年はフロント(たいていラウズ)がソロを吹いている間ピアノを弾かず、手を休めてしまうことが多かったモンクだが、ここではちゃんと伴奏をつけてフロントを鼓舞している。なお、最後に出てきてアナウンスするのはなぜかルイ・アームストロング。音質は、この時期の放送録音にしてはまあまあ。ロイ・ヘインズがドラムスに座ってバシバシ叩いているのもうれしい。
次はサド・ジョーンズ(tp)とラウズがフロントの1957年のニューヨーク録音。個人的に好きで良く聴く5 by Monk by 5(Thelonious Monk)とほぼ同じメンツなのだが、データを信じるなら2年早い。ラウズとの共演という意味でも最初期に当たる。どこかは分からないがかなり大きめのホールでの録音で、音質はとても良く、ライヴでLight Blueを演っているのも結構珍しい。
次は滅茶苦茶レアな1948年の放送録音。アイドリース・シュリーマン(tp)のワンホーン、アート・ブレイキー(ds)がドラムスという、Genius of Modern Music, Vol. 1(Thelonious Monk/Sahib Shihab/Art Blakey)やGenius of Modern Music, Vol. 2(Thelonious Monk/Sahib Shihab/Milt Jackson/Art Blakey)にも参加した連中が付き合ったこれまたニューヨークでのライヴで、 ミントンズ以降の初期モンクのライヴがどのようなものだったのかがよく分かる。といっても結論は、後年とほとんど変わらないなのですが…音質は予想外に良い。これは今回が初登場の音源。
4番目は1955年、スティーヴ・アレンのTVショウに出演したときの演奏。当時のテレビの音声を録音したものなので音質的にかなり辛いものがあるが、これまたメンツが珍しく、フロントはアート・ファーマー(tp)になんとハンク・モブレー(ts)、ベースはミンガス、ドラムスはブレイキーという中途半端なジャズ・メッセンジャーズのようなクインテット。Well You Needn'tで、モンクがカリプソ(?)みたいな変なソロを取るのが面白い。なお、私の勘ではこのテープの大元の出所はフランシス・ポードラのコレクションじゃないかと思う。これも今回が初登場。
一番最後は、1950年、モンクがフランキー・パッションズというあんまりぱっとしない歌手のデモ録音に付き合ったときの貴重な演奏。これは最初パッションズの友達が運営していたWashingtonという自主レーベルからSPで出て、70年代にはSpotliteのCool Whalin'というオムニバスLPで一回だけリイシューされた物だが、今となってはどちらもとてもレアなのでCDでの復刻は大変ありがたい。従来トランペットはケニー・ドーハム、テナーはラウズだとされることが多かったのだが、このたびアイドリースとラッキー・トンプスンであることが判明した。ご丁寧なことに歌詞までライナーに印刷されている。というか、ライナーもブートまがいの割になかなか情報が充実していて勉強になります。
結論。これはモンク秘宝館だ。モンクが好きな人にはおすすめ。そうでなければ全くおすすめいたしません。買っても損はしないと思うけどね。
mhatta氏サンクス。大急ぎでゲトするずら。
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